注文住宅に求められる要素

住宅の、特に新築の注文住宅に求められる要素は多岐にわたり、たくさんあります。
滝沢設計ではデザインを重視していますが、デザインだけではもちろん不十分

重要度に順位・優劣はなく、そのどれもがそれぞれの位置で、ひとつも欠かせないもの。そしてそれら全ては密接に関わり合っているものなのです。

注文住宅のデザイン

*性能

かつて高い関心を持たれていた「耐震」や「断熱」を抑え、一躍トップに躍り出た「気密」

滝沢設計ではかねてから「適切な気密」で入居後のお客様たちから確かな満足の声をいただいてきました。
私の眼には、最近の一種のムーブメントと共に注目されるものには、えてして不純物(=商業主義)が混入してしまうような気がしています。

1 自社の高気密をアピールしている宣伝を身かけると、高気密工事はそういう住宅会社でしか行えない特殊な工事だと思ってしまう。

単純に説明します。

まず初めにお知らせしたいことは、気密化工事は読んで字のごとく「隙間を無くす」ことなので、特殊技術でもなんでもありません。必要なのは、工事をする人の心持ち、すなわち隙間を見逃さない「丁寧さ」「几帳面さ」です。

次に、多くの場合気密性は断熱層に気密性を持たせる形でなされますので、気密工事と断熱工事は2つで一つ、セットです。

専属の大工さんが断熱・気密工事を行う場合もありますが、断熱・気密工事のみを専門に請け負う業者さんもいます。気密測定については元々専門の業者に委託するものなので、実際は特に宣伝をしていない住宅会社であっても。お客様の求めに応じて高気密住宅を行っているところは多いのです。

違うのは、標準仕様に組み込んでアピールしているか・いないか、ということになります。

お客様の立場としては、高気密を宣伝している会社の中から選ぶのではなく、ご自身の希望される断熱・気密に対応できる住宅会社をピックアップして、その他の要素も含め総合的に比較した方が良い選択ができるはずです。

気密で省エネを実現した家

新築の注文住宅に、欠点は許されない

2 宣伝文句だけを見ると「気密性が高いほど良い住宅だ」と思い込まされてしまう。

「気密性が高いほど換気が有効になる」
よく見かける文章ですが、これは少し不十分な表現です。
何事も、なにかをすれば良い作用も悪い作用も起きるものです。ですので気密を高める事による作用の全てをまずは提示すべきです。

気密には
・気密が上がるほど、室内の湿気の逃げ場もなくなる
・気密が上がるほど、室内の汚染空気が排出できない

という作用があります。
つまり、
「気密性が高いほど計画換気は有効。同時に、結露の可能性が高まり空気は澱むので計画換気は重要、かつ必須である
これが正確な表現です。

を上げるだけで良い家になるわけではなく、その成果は計画換気にかかっている

これは大変に留意しなければならない、事実です。さあここで注目されるのが計画換気、ということになります。

計画換気は全能か?

そもそも計画換気というのは、博物館などの極端に静的な環境で有効に機能するシステムです。

一方、住宅はどうでしょう?
住宅の屋内の形状・環境は複雑極まり、しかも常に変動し続けています。それら全ての要素を、家の中の全ての場所に置いて100%シミュレートして換気する事は、実際には不可能です。

例えば気密検査の数値が良くても、住んでから換気の風の通り道に大きな家具を置いてしまうとその奥のエリアの換気・対流が滞り、そこに急に冷える窓ガラスがあれば結露の芽が生まれます。

つまり計画換気だけに頼って気密性能を高め過ぎてしまうことは、博物館なら効果があっても住宅の場合かえって結露の危険性を招くことにつながりかねないのです。

中国の格言に「中庸」という言葉があります。意味は「極端な行き方をせず穏当なこと。片寄らず中正なこと。」

とはいえ、すべからく個々が住宅にどんな性能を求めるかは千差万別で、その多様性も自然です。

滝沢設計では以上を総合して外断熱は採用していません。
結露が発生せずに高い気密・断熱性能を発揮する=最も合理的で、しかも何と言っても外断熱のような大仰な工事費がかからない【吹付断熱】を採用し、C値については1.0をターゲットとしています。

気密もたくさんある必須条件のうちの一つとして、トータルな真(ホントの)いい家を創る滝沢設計のトップページ

注文住宅の玄関を吹抜けにデザインした実例画像

ちいさな玄関、見上げる、吹抜け、空間が広がる

補足 ローコスト住宅の場合

当然のこととして高気密には工事費が伴います。
滝沢設計の実績として、特別な気密化工事を伴わない、「高性能グラスウールの端部フィルム重ね貼り工法+計画換気ではない第3種換気」でもこれまで全く結露は起きておりません。もちろん断熱面でも「一年通してとても快適」という反響以外にはなく、クレーム等は一度も受けたことがありません。これは上記の、外気とのちょうどいい対流が有効に家の中の湿気を外に排出して結露を防ぎながら、かつ断熱性能も十分であり、住宅に求められる性能を確保できていることを、結果として証明しています。

ちなみにこの仕様でも各省エネの基準は満たす事ができます。(ご存知のように省エネの基準には気密の規定がありません)

ローコスト住宅をご希望の方にはこの高性能グラスウールの端部フィルム重ね貼り工法もご提案しています。

そもそも、屋根の上にとても高額な太陽光パネルを設置することが条件のZEHは、電力買取の単価が下がり続けている中で、本当に実効性があるのか?大いに疑問です。

断熱

断熱性能は断熱材の設定だけの話ですので、こちらもどの会社でなければできないという類いのものではありません。

例えば吹付断熱がご希望であれば、ご依頼する予定の住宅会社が標準仕様としていなくても、それを指定すればよいのです。(それを断る理由が無いので、そういう会社は少ないと思います)

今はさほど高額でなくても高断熱にすることは容易ですので、むしろ断熱性能の設定が低い住宅会社を探す方が難しいかもしれません。(ただし、賃貸住宅をお建てになる場合、断熱材はコストダウン項目の候補でもあります)

*耐震性

阪神大震災から東日本震災を経て、熊本地震の後くらいまで常に住宅性能の関心トップを維持していた耐震ですが、やはり「のど元過ぎれば〜」というのはあるものなのでしょうか、昨今では政府の省エネ押しもあり、気密にぶっちぎられている感があります。

ですが耐震は構造強度なので、絶対的な要注意事項です。

そしてこれは気密や断熱のようにどの会社でも同じようにできることではありません。設計者の深い経験に基づいた正しい構造強度の知見が必須です。

真四角の総2階で構造を優先してふんだんに筋交いを入れられれば最も強度が高いわけですが、住宅というのはそういうわけにいかず、そもそも土地の形から真四角にできるケースは稀です。

そこで、ある程度変化が生じた形状の建物に、真四角の場合と同等の十分な強度を持たせる為の設計力が、これは絶対に必要です。

詳しくは構造強度のページをご覧いただければさいわいです。

*採光・通風

採光・通風は先の断熱・気密に大きく影響を与えます。

窓は大きければ室内は快適になりますが、反面、ガラスは熱還流率がとても高い素材ですので断熱性能を損なわないような窓の配置計画が求められます。

また窓を開けることでの通風は、計画換気を阻害することなく、むしろ換気扇の機能を補足・向上させるものであることが望まれます。

*コスト

実はある意味最も大事なことです。だってお金をたくさんかければなんだってできるのが当たり前。

できる家の価値と、最終的な総額。この二つををトータルして判断し、よーく比べてご検討ください。

*まだまだある

・不審者をシャットアウトする防犯性
・使い勝手
・機能的な生活動線、住みやすさ
・最適な設備機器や建材の選択
・家族一人一人の適度な距離感を保つプライバシー
・そして毎日の暮らしを包むような室内・外観のデザイン

ぜんぶ、住宅の大切な要素です。
この最後に挙げた中にご自身の一番優先したいことがあった方も多いのではないでしょうか?

100点満点の家

これらはどれも無くてはならないものばかりです。あるものは突出して良いけれど、あれについては全然考慮がされていない。というのは住宅にとって許されません。

全てが妥協なく高いレベルを満足しながら、最適なバランスで融合している事。

これこそが大事であり、これこそが良い住宅と言えます。