前回はいの一番の「広さ」を改めて見つめ直しました。

誰でも広さの次に気にしたいのは?

今回は「明るさ・太陽の光」を掘り下げてみたいと思います

いま再び、「建築基準法は最低限の基準」

広さの場合と違って、ここには建築基準法も言及しています。あえて言及という中途半端な表現を使いました。そう、前回の「最低の基準」の話を思い出してください。

「日照」と「採光」は違います

建築基準法が規定するのは「採光」を確保する為の基準であり、「日照」ではありません。

日照とはつまり、「日当たり」ですね。

神奈川で土地活用、新築アパートの例

まばゆいばかりの明るさ!

一方採光とは「屋外の明るさ(*直射日光とは限定しない、空気中の反射の天空光や様々な物体から反射してくる関節光も含む)を室内に取り込む事」です。
両者の相違点は、一言でいうと光の量です。(日照>採光)

滝沢設計の賃貸住宅ホームページは

実際の生活のなかでの「採光」と「日照」

太陽の紫外線は、人体に多量直射は有害ですが適量であれば殺菌効果もあります。カビやダニが好む湿気を乾燥させてくれ、室内を温めることで空気の循環を促し換気の手助けもしてくれます。さらには、日々洗濯物や布団を干さなければなりません。

でも、都市化された街の中で日照を確保するのは、周囲の構造物の状況に加え太陽の方位までが条件となるのでとても困難になっています。

一方、直射日光かどうかは問わない採光は太陽の直射光は無視できてしまうことになり、単に窓の部屋の外の空間の確保になるので、可能性は格段に広がります。
都市部の密集地で全ての部屋に豊かな日照を望むのは不可能でも、そこに人は住まねばならないとした時、この「採光」の規定の考え方は、現実にマッチした実利的なものであると言えます。
直射日光はなくても、大きな窓から天空光と間接光が確保できれば、人間の健康に必要な光の量をかろうじて満足できます。

ただし例えば、設計士さんが「法律の採光の規定は守ってますから大丈夫ですよ」と言ったとしても、「明るい部屋なんだ」と思うのは早合点かもしれません。

ローコスト住宅 横浜

トップライトの例

法律の落とし穴

まず採光とは日照ではないというだけでなく、法律の採光の単純な計算方法では頼みの綱の天空光や間接光も不十分になり得るからです。

トップライトに至ってはなんと最大で3倍の採光効果をカウントできてしまいますが、トップライトからの日照は、太陽が通過するほんの一瞬間だけですし、北側の屋根だと全く直射はありません。あくまで補助的な役割とするべきで、これだけに頼って設計を構築するのは適切ではありません。

採光規定の具体的内容は、「窓は隣地境界線から一定の距離離れていなければならない」というものです。つまり確認申請は通っても、隣に高い建物が建ったりしていて常に暗い部屋、というのが十分に有り得ます。

お客様にとってマイナスとなるこうした設計は、絶対にしてはなりません。

又反対に、隣地境界に近くても、そのお隣には将来的にも建物が建たない状況であれば、法律上は採光がとれない部屋でも、実質採光が十分に確保できる部屋というケースも出てきます。
この顕著なケースが、地下室です。
地下室の場合は、ドライエリアの奥行側の立上り壁を隣地境界線と見立てて、採光の計算を行います。ドライエリアの奥行が十分に広ければ、地下ですので直射日光はなくても、天空光と間接光は意外なほど明るく入ってくれます。

お客様を設計で守る

要は、「実際の明るさ・光の量」で柔軟に対応することが都市部での住宅設計には不可欠となります。

地下室のある家

戸建住宅の地下室の例

特にワンルームの賃貸住宅は一部屋だけなので、たくさん部屋があって寝室は暗くてもリビングやバルコニーには日が入る一戸建ての住宅とは状況が根本的に異なります。法律をクリアするだけでなく、日照が確保できないならば天空光や間接光で光の量を確保する設計が必要です。(こうしてみていくと、法律の採光規定の基準はあまり重要ではなくなってきます。でもその主旨は肝に銘ずる価値があります)

もちろん、まずは日照を得る設計を目指すのが正しい取り組みです。
でもそれが不可能なケースはたくさん起きます。そのときこうした、天空光・間接光を活用する視点をプラスする事により、設計に自由度が増しバリエーションが豊かになり建物全体としてのプランが充実してきます。

オーナー様の恵み⇐入居者の満足⇐建築士の責務

ただ闇雲に収益だけを求めて住戸数だけを増やした結果、全く日照も・それに代わる十分な採光もない住戸ができてしまうのは避けなければなりません。建築基準法の最低限の基準に甘えてしまうことなく、住戸数の最大化を目指しながらも、「健康に生活するために実質として必要不可欠な規準」を加える」ことが建築士としての正しい、良心的な姿勢だと考えます。

いや、建築士として云々などでなく、入居者にとっての入居を決断させる魅力、さらに長期居住につながる大きな要因となります。

そして結果的に、オーナー様にとって空室の少ない安定した経営へと導いてくれるのです。

賃貸住宅の黄金律

滝沢設計のホームページにも詠っていますが、この「入居者ファースト」は巡り巡ってオーナー様の恵みとなる、これは黄金律です。

その1」も読んでみて下さい