ウッドショック勃発から現在まで
3年ほど前まで建築資材価格は、小幅な変動はありながらも概ね横ばいで安定と言ってよい状態を保っていました。
ウッドショックに端を発した建築資材の高騰は、瞬く間に鉄鋼材のアイアンショックに連鎖し、電線に使う銅、塩ビ、アルミ、セメント、さらには建築用の砂へと止まるところを知らずに飛び火しました。
そしてそれが慢性的な半導体不足による設備機器の供給不安定化までも絡み合って、瞬く間に建築コストの常識を塗り替えてしまいました。
原材料とはあらゆる製品に加工されるものですので、例えば塩ビ一つをとっても、値上がりの影響を受ける建材は多岐にわたります。
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つまり現在においては、何から何まで全ての建築資材が値上がりになっています。それに加えて、ずっと耐え忍んできた人件費も昨今では上がり始めています。
添付のグラフから見ても、3年前と比較すると全体で3割近く上がっています。
現在(2023/1月現在)、最も早く高騰が始まった木材に限っては値を戻し始め、鉄鋼材は高止まり感が出てきました。ただし、その後に起きている塩ビ・アルミ・セメントなどの値上がりはこれからが本番です。
全体的にみると若干上がる勾配は緩くなってきているとはいえ、現在も上がり続けています。
これは家を建てようとする方々にとってどういうことか
影響が大きいケースでは、予定していたご資金が一般的な建築費に届かなくなってしまう可能性があります。
そうした状況を前にして、「時代だから仕方ない」と追加の費用を捻出できる方くない人の場合、まずはその金額でも建てられる住宅供給会社を探すということになります。
会社の規模が大きくなるほど増大する会社経費を利ザヤによって賄う必要がある為、建築費というものはその会社の規模に比例します(工事業者の見積りの高い安いは、工事の質ではなく見積りの原価に上乗せされる利益率の影響が最も大きくなります)。
例えば対象を、ハウスメーカーから小さな工務店にと業態ごと変えるだけで大きな減額が期待できます。
ですが、元から小さな工務店でスタートされた方は大きな減額にはならないというのが現実です。
問題は、今回の高騰の幅が大きい点と、値上がりが現在進行中であることです。
あまりマイナスの話ばかりはしたくないのですが、問題点を洗い出すことで解決の道が見えてきます。
今起きている事
1 当初から限界ローコストで進めてきた場合これ以上金額を下げられない為、新たね値上がりには対応が難しい。
2 設計期間が長くかかる場合、その間に見積額が上がってしまい計画の見直しを迫られる。
考え得る対応策
1の状況を打破する方法は、
ローコスト化のギアを更に上げて押し進め、窓を減らす・建物の外観や間取り、屋根を最小コスト形に単純化する・施主支給を増やすなどを総動員して予算内に収める。
そして、建築期間を長くかけずに今より値上がりしないうちに素早く建て終える。ことです。
2の場合は
ご要望に妥協せず、必要な時間はしっかりとかけて満足の家造りをしたい方には、「限界ローコスト一筋の家造り」は適さなくなってきているのが現実です。だからといってもちろん無尽蔵にお金をかけるのではなく、できる限りのコストダウンで金額を抑えるスキルを持つパートナーを選ぶことがはじめの一歩です。
じっくりと時間をかけて家造りをするならば、その期間内の建築資材高騰への備えも肝要
具体的には、
広さ、仕様などなにかしらある程度の余裕をもった設計でスタートすることが有効となります。
これは、値上りに対応してコストダウンを行う余地になります。
ただしこの際、なるべく原設計を損なわない範囲で効果的に最大のコストダウンに結び付けるはセンスと技術力、経験量がモノを言います。
滝沢設計の設計スタンスは、「ローコストは良い建築の条件のあくまでひとつにすぎない。必要なものは決して削らず、限られた予算の範囲内でできるだけ付加価値を最大化する」です。
そのため元来限界ローコストでのスタートにはならず、どこかに「ゆとり」的な設計が織り交ぜられています。この姿勢が今とても有益に働いています。
また不断に取り組んできたコストダウン技術の蓄積が滝沢設計のローコストを土台から支えてくれています。
「ゆとり」の部分を、金額を下げても価値を損なわなずに工事をする方法。この引き出しを多く持つ、あるいは新たに考え出すスキルを設計者が有している事が、こうした厳しい時代においても満足度を下げずに高質な注文住宅を建て続けている実績に繋がっています
もちろん現在の状況は求められるコストダウン幅が大きくなっているので、金額の調整にはより多角的なアプローチが必要となり、以前よりも長い時間を費やします。
そんななかでも中止や中断とまでには至らずに、計画を進めていくことができている、これは重要なことです。
世の中が変わっても、変わらないもの
昨日まで安定していたものが突如不確かになってしまうのがこれからの未来なのかもしれません。