このふたつ、すごく大切ですね。最も大切といっても過言ではありません。

どこかで聞いたことのあるようなフレーズなのでつい、当然のことのようにさらっと聞き流してしまいそうですけど、大切=必須ということなのですから、この言葉にどんな意味が含まれているのか、もう少し丁寧に掘下げてみましょう。 

まず人は家を建てる時、どんなことにワクワクするのでしょうか?

(もちろん、設計者よりも家を建てる側であるお客様のワクワクを最優先で考えます)

「ワクワク」を解剖

解剖結果

1、長い間ずっとあたためていた要望を、設計者がしっかり受け止めてくれた時

2、金額や難易度から無理だろうと諦めていた要望が、工夫とアイデア次第で実現できると知った時

3、期待していなかったところで、設計者から想定外の嬉しいサプライズ提案を受けた時

4、出来映えが予想を上回るものだった時

5、自分でも気づかなかった潜在的な希望まで設計者が引き出してくれて、それを家造りに反映させてくれた時、などなど

ではないかと思います。

こうして改めて見ると単純な「わーい、家ができた」とかではなく、要望に対する成果にかなりハイレベルな満足を得ることができた時だということが分かります。特に2~5は、有名な芸能人をつかってCMを放送したからできるようになるようなものではなさそうです。 

さて、では次にこれらのワクワクを実際に感じていただくために我々供給する側はどうすれば、そしてどのようなスキルが必要なのでしょうか?

供給側の心得

1,,ご要望を否定せず実現する、業務効率よりもお客様の満足に喜びを感じる人間性

2,,ご要望に更に付加価値を上乗せしてカタチにする設計の能力

3,,一見不可能と思われるようなことでも、なんとか方法を考え出す柔軟で斬新な発想と、あきらめない根性と持久力

4,,単に受け身にならないで、+αの価値あるデザインを発想する提案力

5,,「できた」で終わらず「もっと良くしよう」という向上心

6,,完成した住宅の全てが、一般的平均の感覚でセンスが良いと感じられること

ざっとこれらのことが必要条件です。こちらも1,,以外は簡単なものがひとつも見当たらず、またどれも外せそうもありません。

そしてこのハードルの高さの質は、設計者個人の力量にかかっているものばかりです。強い個性は大きな組織での集団的利益とは相反するので、一般的に大企業ほどこういった人材は育ちづらいと言えそうです。

先立つものとしてまず、設計者のデザイン能力が不可欠ということが分かりました。センスが良くて頑張り屋さんの設計者と出会うことができれば、ワクワクする提案を受けることまではできそうです。

夢のある設計

ワクワクは一日にして成らず

初期のワクワクだけで終わらせないために、夢のある設計が求められる

「夢のある設計」

これまた家造りには不可欠で、かつよく聞くわりによく分かっていないフレーズです。

乗りかかった舟ということでこちらも掘下げてみます。

 

ここから先は、設計者にはまた別の大事な能力が求められてきます。それはコスト管理と工事監理という、一聴すると「夢」という単語のイメージとは遠そうな技術屋さん的能力です。でも実はこれこそが「夢」を実際に形にする為になくてはならないものなのです。

コスト管理

たとえば、設計自体は素晴らしい提案だったけど、施工業者が見積もりをしたらとんでもない高額だった・・・ワクワクどころではないですね、これでは実現ができません。ここまできてお客様に要望をあきらめてもらうなんて、「夢のある設計」とは正反対。

つまり設計とは、コスト管理と同時に並行して進めなければならない、そうでなければどんなに設計が素晴らしく見えたとしても成り立たず、「夢」がしぼんでしまいますね。

建築とはお客様の資金で行われるものですから、これは必須なのです。

そして実際に工事まで進んで、きちんと形として出来上るものだけが設計と呼ばれるべきです。

「でも、そのコスト管理って具体的に何をどうするの?」と思いますよね。魔法のランプも「うちでの小槌」もないのです。施工業者に無理な減額を強いると施工不良というしっぺ返しを喰らいます。

そんな特殊なものに頼らなくても、工事費はあくまでも正攻法に、理詰めで圧縮できます。これをVE(価値を替えずにコストだけを下げる技術)と呼びます。

工事費の解剖

工事費は大きく分けて2つに分類できます。

A;材料費

B;施工する人に払う人件費

工事費を下げるにはこれら二つを抑制しよう、ということになります。

Aを抑える為には、多くの経験に基づいた商品・建材知識の蓄積が必要なので、設計者としての長いキャリアと経験値、そして「より安くより良い」新しい建材料を絶えず探し続ける探求心や根気が求められます。まだあります。どの建材をどの設計に採用するかのキレた感覚とセンスも要りますね。

工事監理が要

Bを抑えるという事はつまり、現場の職人さん達の作業時間の短縮です。

その為には、彼らの仕事を知っていなければなりません。これはどちらかというと工事監理の分野ですが、これがコスト圧縮にも大いに役立つのです。

職人さんの仕事・そして気持ちまでを知っていれば、より短い作業時間でがっちりと施工できる設計を、しっかり検証することができます。道が平らにならされていれば安心して走ることができますし、先に進んでいってもつまずくことはありません。

A,B双方ともに精通していることで、コストはスムーズに無理なく圧縮することが可能になるんです。

確かな技術に裏付けされたシビアで綿密なコストコントロールの上でデザイン設計を行い、そしてその設計には、お客様の「夢」の原型が決して損なわれることなくしっかりと維持されている、そこで初めて「夢のある設計」が生まれてきます。

そしてもっと欲を言えば、期待していた以上であること。更に+αの提案まで加味されている。ここまで行けたらこれぞ最高ですね。

高額な資金をおかけになられるのですから、大いにぜいたくを求めたっていいと思います。

家造りは自由

ここまで、家造りでお客様が求める「ワクワク」、「夢のある設計」を産み出すもの。という観点において詳しく見てみました。

ただ、ごく一般的な家をご希望の場合でしたらここまで依頼先を絞る必要は全くないとも言えます。また、その中間でも様々なケースがあることと思います。

例えば「ワクワクは欲しいけどウチはほどほどで十分」という方もいらっしゃいます。また、デザインとコスト管理を両立できる設計者は希少ですが、デザインのみを得意とする人はたくさんいますので、もし建築資金に余裕がおありになれば施工業者からのサポートに費用をかけることができます。その場合設計者の役割が減ってきますので、ハードルはかなり下がってきます。

などなど、お客様ひとりひとりに全く個別の環境があり、家造りもそれらに合ったそれぞれのかたちがあっていいですね。

ご自分だけにマッチする個別の「ワクワク感」を見つめ直してみることも、家造りのパートナー選びに良い道筋を見出す上で、きっとひとつの助けになってくれることでしょう。