ご自分の住まいと収益目的の賃貸住宅が一体化したものを賃貸併用住宅といいます。
これはある人たちにとってはいいとこどりとなります。でもある人によっては器用貧乏となってしまうかもしれませんので、注意が必要です。
まず、単なる自己用住宅とは異なって投資的な要素が加わります。又建物規模も大きくなりますのでその分建築費用も多く投資するのに、これが器用貧乏に終わってしまうのは不幸といえます。
今お読みいただいている方それぞれにとって、この賃貸併用住宅というものがどのような位置にあるか?今一度冷静に、ここで検証してみていただければさいわいです。

分かれ目は、賃貸併用住宅の良い所と注意点を整理することで浮き彫りになってきます。

賃貸併用住宅 神奈川

良い所

・純粋なアパートなど賃貸「専用」住宅の際に利用する投資用ローンではなく、住宅ローンがつかえる。(住宅部分の面積が半分以上ならば、という条件付きですが)
住宅ローンは、金利・融資限度額・年収・勤続年数・ローン控除・減税、全てにおいて投資用ローンよりも借り手側に有利なローンです。

・自宅のローン返済に賃貸部分の収益を充てられるのでローリスクで憧れの注文住宅が手に入る。それどころか家賃収入が月々の返済額を上回ることも、ローンの組み方次第で全然夢ではありません。

・この、ローンを返済しながらも家賃収入を見込める(*賃貸の住戸数やご自宅部分に欠ける費用にもよります)場合、自宅建築の予算としてだけではなく、その後の人生設計にもゆとりが持てる。

・土地などの条件上、自宅部分が小ぶりとなってしまった場合などには、もし将来引っ越すことになった際に、その自宅部分を新たに貸しに出す、という案もあります。これは選択肢にゆとりが持てますね。

実例を動画でご紹介〈オーナー住戸部分編

実例を動画でご紹介〈賃貸住戸編

注意点

・純粋に投資としてみた場合、自己住居部分がレンタブル比(建物全体に対する賃貸=収益部分の割合)を押し下げるので収益性は低い=いわゆる「利回り」の数字においては純賃貸住宅よりも低い数字となります。

・利回りが低い為、その次の投資の為の融資を受けようとする際には、一般的に純賃貸の建物を所有している場合より金融機関からの信用性が低い。(とはいってもその賃貸住宅の採算状況にもよりますが)

・注文新築住宅としての魅力ある設計と、賃貸住宅として収益性の高い設計が両方ともに高いレベルでなされる事はもちろん、更に、自分達の住まいと賃貸入居者とのプライバシーをしっかりと確保する必要がある為、より高度な設計が求められる。

神奈川県 賃貸併用住宅

手前に賃貸住宅が3戸、奥はオーナー住居の入口

投資の観点で要約すると

「アパート投資はしたいけど自分達の注文住宅も、今、欲しい。というか必要!」という方にとっては、賃貸併用住宅は[いいとこどり]となります。

一方投資としての収益性が最優先であり、自分の住まいを併用して建てる必要性が低い・あるいは必須でない方にとっては、賃貸併用住宅は<器用貧乏>になってしまう可能性があります。
つまり、自宅と賃貸住宅をそれぞれ個別に建てることの方が、総合的に判断すると望ましい。といった可能性も十分に検討していただきたいと思います。
ただ、それぞれ個々のご事情は様々ですので、なにかの条件が加わることにより採算だけがすべてを左右しないケースももちろんあるでしょう。そういった方たちには賃貸併用住宅こそが唯一無二の最善策であるかもしれません。

いずれとしましても、マイホーム・賃貸住宅、という2者択一ではなくそこに、賃貸併用住宅という選択肢も加えて、時には建築士に相談しながらじっくりとご検討していただければと思います。

賃貸併用住宅 実例

入居を確かにする内観デザイン、募集時のインテリアも重要。

賃貸併用住宅を「設計」という観点で斬る

せっかく余裕が持てた住まいへの予算は、100%活かしきらなければなりません。ただ漠然とキッチンの扉のランクを上げる、などというものに大切なご予算を費やすのではなく、より高度なアイデアと工夫で期待以上の価値をもたらすのが理想ですね。
それこそが注文住宅としての満足、そして、賃貸の入居者へのアピールとなり、賃貸併用住宅を成功へと導いてくれます。

また先に書きましたように、設計には賃貸部分の収益性と賃貸住戸同士及び賃貸とオーナー住居の間のプライバシー確保という、絡み合った要件が求められるわけです。

そして土地。どこでも好きな所に建てられるというわけはなく、自己所有地の場合はもちろんのこと、土地購入からの場合でも「これだ」という敷地の選択肢は、予算や希望の立地などにより以外と狭いものです。そういう中で選別に残る敷地には高低差や変形などといった課題がある事も多く、その設計の難易度は複雑さを増し更に上昇します。
ですので、「斜線制限が厳しい」「採光条件が十分でない」「条例の避難通路規定が厳しい」からといっても、すぐに諦められるものではなくなってきます。
様々な設計テクニックをフルに駆使する事はもちろん、斬新な法解釈を認めてくれるように確認審査機関と折衝する交渉力までもが求められてくるのです。

実例 賃貸併用住宅

最上階のオーナー住戸は勾配天井で天井が高いリビング

さらにいえば、神奈川や東京というのは人口が多くあらゆる意味で競争の激しいエリアなんだ、ということを念頭に、建築後の長い年月を、十分に投資として成り立ち続けるような付加価値の高い建物を建築する。という心構えも必要です。

特に土地を購入して建てる方の場合,土地代金が重しとなって、自己所有地で建てる方より収益性はもちろん低下しますが、下がるがままに任せるのではなくその中にあっても可能な限りの最上収益を目指さなければなりません。

このように、賃貸併用住宅にはほんとうに沢山の必要要素があり、それらが互いに密接に影響し合っています。
ですが、お客様が持ち込まれる他社さんのプランなどで時に見られるのですが、諸要素が絡まってしまい収拾がつかないような設計に陥ってしまう事は許されません。設計のプロとして、それぞれを適切なバランスでしっかりとまとめ上げなければなりません。
これは、サラリーマン的なパズルのように必要諸室をマス目にはめ込むだけの設計手法では、残念ながら成し得ることは難しいのかもしれません。

「もっと、さらに良い設計を」という姿勢とそれを具現化できる力量。
それが賃貸併用住宅の設計者には求められ、成功の行方をも左右すると言っても過言ではなさそうです。

賃貸併用住宅 東京 神奈川

オーナー住戸と賃貸のプライバシーを保つ玄関の位置

賃貸併用住宅を「コスト」という観点で斬る

これまでお話ししてきたように、賃貸併用住宅は沢山の必要要素を一つに詰め込む、難易度の高い建物という事が言えます。これは建築コストにも影響します。もちろん、放っておいたらどんどんと高額になってしまう傾向があります。

ということはつまり、お客様のご予算も常にぎりぎりとなる事を意味しています。
たくさんの希望が詰まった夢だからこそ、初期のプランの段階から常に、ローコストという視点で全体を、そして細部にまで目を配ってコントロールし、デザイン・収益だけでなくコストもでき得るかぎり抑えて、最後まで完成させなければなりません。
お客様が建築依頼するパートナーが、それを実行する能力を有することが実現への根っ子となる事は間違いありません。

2階建て賃貸併用住宅の実例(画像・解説・動画)はこちらのページでご覧いただけます

3階建て賃貸併用住宅の実例(画像・解説・動画)はこちらのページでごご覧いただけます

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