「戦わずして勝つ」

孫氏の兵法の中の有名な一節ですね。
アパート建築は今魅力的な投資であるが故の、新規参入者の増大と競争の激化。
東京都では土地が潤沢にあるとは言い難く、また神奈川県は人口も多く工場や企業などの勤め先も豊富でまだまだ新規参入者にとってアパート建築に適した土地が存在します。と、これがまた熾烈な競争を生み出してもいます。
しかし、これを戦い抜いてこそ、初めて投資が実を結びます。
でもこの戦いは大変そう。できることなら「戦わずして勝ちたい」ですよね。

戦うのは優劣をつけるためなので、初めから優劣がはっきりしていれば戦う必要自体がありません。本来の兵法の意味合いとはちょっと違ってそうですが、とにかくこれを理想としたいところです。
ここで、優劣の基準は「入居者にとっていかに魅力ある部屋か」としっかり定めます。どうしてかは、この後をお読みいただける中でご理解いただけると思います。
もちろん、常にコスト過多とならないように気を配ることも忘れてはなりません。

賃貸併用住宅の設計

孫氏の兵法に学ぶ、賃貸住宅で勝つ方法

まずは斬新な設計力で基礎力アップ

土地購入から始める場合、全住戸が同じプランの金太郎飴型が成り立つような土地は整形で高額な可能性が高くなります。その結果建物予算を削る→入居者からすると魅力がないので、低い家賃設定で更に数年経過後に空室、という悪循環を生み、戦う前から負けてしまいます。
土地としては条件が劣る割安な土地で、高付加価値の建物を建てることが必須の好スタートの基準ですので、先入観を捨て、安易な金太郎飴の連続住戸ではない斬新な設計をするという姿勢が今後は必要となります。

一方、自己所有の土地でアパートや賃貸併用住宅を建てる場合は、なんと土地代がゼロ円という採算・収益面ではとても恵まれたスタートです。が、こちらの場合は土地購入からと違ってある意味、土地を選ぶ事ができません。
東西に長く南道路に面している好条件の土地は多くはありませんので、その与えられた土地に合わせて勝負していく為にはやはり型にはまらない柔軟な設計で臨むことが求められます。

間取り要件(必要なもの=ハード面)

設計(プラン)の必須パーツ

・1住戸20㎡以上ならば手洗器付き浴室でなく独立洗面室。18㎡以下ならやむを得ず
・洗濯機は廊下の丸見えの場所には置かない
・ミニキッチンでないデザイナーズ仕様の一体型キッチン、サイズは1200以上
・冷蔵庫.食器棚を置くスペース
・居室は独立させ境に扉を設ける
・廊下は最小でデッドスペースは不可
・25㎡以上なら収納は2か所以上
・なるべく各室に2面採光

とはいってもかたくなに全てを満たそうとすることは却って全体を損なうことがあります。
まず起きるのが、面積がどんどん大きくなってしまいます。なにせ20㎡や25㎡のなかにひとつの住宅を詰め込むわけですから100%は無理というもの、必ず柔軟な発想でひねりを加えないと収まらないのが常です。
例えば
・独立洗面室ではないけれど視線がさえぎられるスポットに洗面台を配置
・キッチンを居室内にすることでデッドスペースが無くせる場合、対面キッチンとして違和感を減ずる
など、それぞれに対しいくらでも対処策はあります。

また居室の形は真四角が理想ではありますがそれが無理な場合、「変形だが使いにくさは無い」範囲内である程度自由に発想する。入居募集の際には家具を書き込んだ図面でアピールすれば、その形がかえって入居者の目に新鮮に映るかもしれません。

性能の向上

戸境の防音は建築基準法で防音構造が求められていますので、これまではそれをやっておけばOK、のような感覚がありましたが、建築基準法はあくまで「最小限の基準」を定めた法律です。このレベルを高めるという姿勢が必要で、またここでかかる最低限のコストは惜しむべきではありません。もちろん工法や建材を吟味して増額を最小限に抑えた上でのことなので、時には全く独自のやり方を考え出すことも求められます。

また、断熱材を強化して室内環境を向上させることは、空室率を下げることに寄与してくれます。

土地

土地が整形でない場合、そして何よりも神奈川や東京の必ず隣家が建っている周囲状況において全ての住戸に均一な採光・プライバシーを確保しつつ、一つでも多くの住戸をその敷地に計画するという、隣地の建物への対策も必須です。
柔軟、時に斬新な発想で設計することで、一見斬新でも要件を満たしている住戸として成り立てば、大切なお持ちの土地、あるいは大金を投じて取得した土地の潜在している価値を最大に引き出す事ができ、収益も想定以上となります。

道路との高低差がある場合はまた違う意味での設計力が必要です。高低差の処理には擁壁や土木の知識経験が求められます。最も効率のいい魅力的なアパートの設計を活かすための最適な、こんどは土木計画。を練り出せる能力、いわば技術屋さん的な力量ですね。

内外観のデザイン(差別化が決定的なものとなる=ソフト面)

ここまでに書いてきた事だけでも、競合相手にかなり優位に立てています。ですがまだ決定的とは言えません。
いえ、真に差別化ができるのはここからです。

デザインの基本

デザインは初期の設計の段階でほとんど決まります。巷にあふれる「ゴテゴテと飾り立てているけどなんかチグハグな建物」、は残念ながら設計の基礎が欠如しているために「形」と「ライン」に整合性が無い事に依ります。こればかりは後からどんなに高価な建材を表面に貼りつけても挽回できないというか、かえってわざとらしさが強調されていくのです。
この「形」と「ライン」が正しい意図をもって設計されていれば、高価な飾りつけが無くてもそれだけで十分に美しい。つまりはこれがローコストにも直結するのです。

 

そしてここに更に、アクセントとして効果的な部分を厳選して、違う素材や色を組み合わせていく。もちろんコストは最小限を念頭に。

ここでもう優位性は決定的になってきました。

とどめ;入居者に目を引くプレゼントを用意する

1、間接照明
以前にはなくて、今あるもの、安価なLEDの照明器具を上手に使いこなして効果的に間接照明を造作で組み込みます。(驚くほど低額で施工できます)

2、モザイクタイル
効果が最大の場所に、使用する面積を絞ってモザイクタイルを用います。
(ここで重要なのは、正確な施工図をきっちり書いて現場作業者に渡すことです。これがないと工事費は何倍にも膨れ上がってしまいますので)

競合相手ができないことをする

こいうったことについては、修業時代に建築デザインの基本を先輩方から厳しくたたき込まれて来た、我々設計事務所(一部では建築家ともいう)の専売特許です。残念ながら土地活用会社・ハウスメーカーや工務店さんにはこうした教育を受ける場がないので難しいと思います。

神奈川で賃貸併用住宅の実例

神奈川での賃貸併用住宅の実例

工事費用を新たな視点でとらえる
これらのほとんどは、費用の面では上昇となります。額で言いますと1住戸当たり数十万円前後でしょうか。
でもちょっとだけ長いスパンで見直してみましょう
・安普請で造ってしまった際の、空室時のマイナス
・安普請で造ってしまった際の、低額の家賃設定によるマイナス
・安普請で造ってしまった際の、早すぎる家賃値下げ
を検討対象に加えますと、ケースにもよりますが数年から長くても10年以内には取り戻し、その後は増収分だけが増し積まれていくことになります。
というかそもそも論として、安普請のアパートでは経営が立ち行かなる可能性があると言えます。

そしてなにより、土地購入からの方にとっての出口戦略としても、付加価値の高いアパートとして建てておくことは必須条件です(安普請のアパートが希望価格で売れない。という事例が現在続出してきています)。

成功の為の、圧縮した最低限のイニシャルコストはプラスに捉えることが、長いスパンでの成功には肝要となります。

成功は積み重ね

他にはできない設計のノウハウと創意工夫を積み重ねることで、入居者にとってとても魅力的な、言い換えますと内見した瞬間に「他よりも、絶対ここがいい!」と思わせる事ができる賃貸住宅になります。
他にはない魅力を持っているので、戦う必要がありません。
これこそが唯一、「戦わずして勝つ」ことができる秘訣となります。
ここで初めに戻ります。
「入居者にとって魅力ある賃貸住宅を建てる」事、長い目で見ればこれが戦略となるのです。

もちろん我々設計者が勝手に進めるわけではありません。一つ一つ説明・プレゼンをします。そして常に最終決定者は賃貸住宅のオーナー、つまり未来のあなたです。

「戦わずして勝つ」ために、遠回りはいけませんが、近道もまたありません。

でもその「道」は必ず、確かに存在しています。

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