「戦わずして勝つ」

孫氏の兵法の中の有名な一節ですね。
アパート建築は今魅力的な投資であるが故の、参入者の増大と競争の激化。
特に神奈川県は人口も多く、工場や企業などの勤め先も豊富。しかも東京のように土地が枯渇しておらず、まだまだアパート建築に適した土地が存在します。と、これがまた熾烈な競争を生み出してもいます。
しかし、これを戦い抜いてこそ、初めて投資が実を結びます。
でもこの戦いは大変そう。できることなら「戦わずして勝ちたい」ですよね。

戦うのは優劣をつけるためなので、初めから優劣がはっきりしていれば戦う必要自体がありません。本来の兵法の意味合いとはちょっと違ってそうですが、とにかくこれを理想としたいところです。
優劣の基準は「入居者にとっていかに魅力ある部屋か」としっかり定めます。ただし常にコスト過多とならないように気を配ることも忘れてはなりません。

優れたアパート建築

設計で基礎力アップ

先入観を捨て、金太郎飴の連続住戸は基本的に避ける方向で設計するという姿勢が今後は必要となります。
逆に言うと、金太郎飴が一番効率の良い整形の敷地は高額な可能性が高く、建物予算を削る→空室、という悪循環を生みかねないので気をつけましょう。

間取り要件

・手洗器付き浴室、でなく独立洗面室が理想
・洗濯機は廊下に置かない
・ミニキッチンでない一体型キッチン、サイズは1200以上
・冷蔵庫.食器棚を置くスペース
・居室は独立させ境に扉を設ける
・廊下は最小でデッドスペースは不可

とはいってもかたくなに全てを満たそうとすることは却って全体を損なうことがあります。
まず起きるのが、面積がどんどん大きくなってしまいます。なにせ20㎡や25㎡のなかにひとつの住宅を詰め込むわけですから100%は無理というもの、必ず柔軟な発想でひねりを加えないと収まらないのが常です。
例えば
・独立洗面室ではないけれど視線がさえぎられるスポットに洗面台を配置
・キッチンを居室内にすることでデッドスペースが無くせる場合、対面キッチンとして違和感を減ずる
など、それぞれに対しいくらでも対処策はあります。

また居室の形は真四角が理想ではありますがそれが無理な場合、「変形だが使いにくさは無い」範囲内である程度自由に発想する。入居募集の際には家具を書き込んだ図面でアピールすれば、その形がかえって入居者の目に新鮮に映るかもしれません。

性能の向上

戸境の防音は建築基準法で防音構造が求められていますので、これまではそれをやっておけばOK、のような感覚がありましたが、建築基準法はあくまで「最小限の基準」を定めた法律です。これを充分なレベルまで高めなければならず、またここでかかるコストは惜しむべきではありません。ただし工法や建材を吟味して増額を最小限に抑えることは言うまでもありません。時には全く独自のやり方を考え出すことも求められます。

また、断熱材を強化して室内環境を向上させることは、空室率を下げることに寄与してくれます。

土地

整形でない場合、一つでも多くの住戸をその敷地に計画するためには、先入観は邪魔となります。
柔軟、時に斬新な発想で設計することで要件を満たした住戸として成り立てば、安価な土地だからこそなし得る高利回りが実現できます。

道路との高低差がある場合はまた違う意味での設計力が必要です。高低差の処理には擁壁や土木の知識経験が求められます。最も効率のいい魅力的なアパートの設計を活かすための最適な、こんどは土木計画。を練り出せる能力、いわば技術屋さん的な力量ですね。

内外観のデザイン

デザインは初期の設計の段階でほとんど決まります。巷にあふれる「ゴテゴテと飾り立ててい入るけどなんか変な建物、はこうした設計の基礎が欠如しているからです。こればかりは後からどんなに高価な建材を表面に貼りつけても挽回できません。
それは最初に目に入る「形」「ライン」です。
建物のラインや開口部(窓)に全体として意図があり整合性がある、それらが価値をもっていなければなりません。反対にこの基本ができていれば、ある意味何もしなくても(=単一の建材だけでも)十分に鑑賞に耐えうる。あとは部分的なアクセントが的確であればもう十分。つまりはこれがローコストにも直結するのです。しっかりとしたデザインとはこのことを言い、また良いデザインは根がしっかりしているので、初めの好感が色褪せず飽きることもないのです。

デザイン
ここについては我々設計事務所(一部では建築家ともいう)の専売特許です。残念ながら土地活用会社・ハウスメーカーや工務店さんはこうした教育を受けておらず、方向性を持って取り組むという習慣がありません。表面のみを模倣しようとする試みも見られますが、これは一朝一夕で身に付くものでもない為にどうも物足りなかったり、ちぐはぐだったり、価値を上げられずに終わってしまうのです。

そしてメインの「単一の建材」の選択。これもとてつもなく重要ですね。あらゆる選択肢の中から時間と労苦を厭わずデザイン面・コスト面・メンテナンス面全てに最適なものを選び出しましょう。

メインが決まったら次は「部分的なアクセント」の選択。いやーこれも負けず劣らずです。
先ほどの単一の建材の時と全く同じ緊張感で選択に臨まなければなりません。時にはこちらの選択があまりに良くて、これに合わせてメインを変更、などということもあります。

成功は積み重ね

こういう試行錯誤は産みの苦しみですので、この苦しみを乗り越えてこそ、初めに掲げた「入居者にとっていかに魅力ある部屋か」に応えることができるのです。
これら一つ一つを、設計者は建築主に説明・プレゼンをします。そして常に最終決定者は建築主、つまり未来のあなたです。

「戦わずして勝つ」ために、遠回りはいけませんが、近道もまたありません。
ならばこそ、お客様に過程を楽しみながら進めていただくために、設計者は産みの苦しみを重ねてそのお手伝いをすることも、我々の仕事のひとつです。