工事監理工事監理は重労働です。
設計にもたいへんさはありますが、、設計は根幹に生まれつきの感覚や才能に依る部分が大きく、ある種の芸術的な産みの苦しみを伴います。
工事監理は体自体を工事現場にもっていかねばならず、デザインを実体化する為の施工方法の決定や地道な施工図での諸々の計算、現場の職人さん達を交通整理して取りまとめ。更には工事費の管理など、センスよりも頭の回転や処理能力、そして現実の時間と体力の消耗が激しい仕事です。

建築士の仕事には、大きく分けて「設計」と「工事監理」とがあります。

施主の希望を具現化し、各法律に則し、かつ設計者の意図を組み込んだ図面をまとめ、建築確認を取得する。これが設計ですね。

工事監理では、この設計通りに工事が進んでいるかを監理するわけです。(実務上はさらに法的な検査対応や工事記録書類の収集といった事務作業があります)

建築士法を見てみますと、「工事が設計図書の通りに実施されているかいないかを確認することをいう」となっています。

これだけで良いなら、これはある程度技術的な面が多いので(もちろん経験や知識は必要ですが)、体力的にはさほど大変な業務ではありませんね。

「工事監理」を設計が終わった後の建築士の全ての業務、ととらえますと、実際の実務ではとてもこれだけではすみません。

・工事契約の取りまとめ(施工業者選定・見積額の交渉・工事契約書の内容チェックなど)
・地鎮祭の連絡取次係
・地盤調査の手配、地盤改良工事の見積額交渉、日程調整
・上棟式の連絡取次役、進行係
・担当の現場監督と大工さんに図面一式を製本して手渡す

とまあ、あきれるほどの用が次から次へと・・・そしてようやく工事が本格的に始まります。

現場で工事される方達は、もちろん図面を見て工事をします。図面があるんだから図面の通りにできるだろう、と思うとなかなかそうもいかないものなのです。
図面に書かれている事を誤って理解したり、ある箇所を読み飛ばしてしまったり、あるいは意図的に省略(悪く言うと手抜き、あってはいけません!)してしまうこと、いけないことです。でも人がおかす過ち、これを完全に根絶することはできません。

「図面通りに」、という一言。
これは、ハウスメーカーのような画一化されたパターンを組み合わせるだけの住宅ならば単純です、難しいような施工はなく極普通の施工で十分な工事に抑えられていますので。こうしたおおざっぱな一言でも大きな問題は無く進んでいくでしょう。
しかし束縛を開放し、既成概念を取り払いかつ、基本的な性能はしっかりと保持した建築を実行する、しかもコストは極限まで圧縮。こうなってくると途端に、この施工は容易ではなくなってきます。
現場の工事の人たちに、普段はあまり扱いなれていないような建材料・造作工事の納まりを、ひとつひとついかなるものか丁寧に説明し、そして更に、気持ちよく仕事をしてもらうように隅々に渡って調整すること。これもまた、設計事務所の重要な責務の一つです。
ふんぞり返って頭ごなしに「この通りいやればいいんだ。」なんてやったものなら、ほぼ高い確率で工事は多かれ少なかれ滞ってしまいます。最たる状況では、大工さんが「俺はやらねえよ」みたいに居直ってしまいます。彼らに言わせると「ゼニカネの問題じゃねえ」というわけです。
たとえ図面通りに造られていなかった場合でも、それをただ単に責めてしまうと、職人さんがへそを曲げてしまったらちょっとやっかいです。一般常識ではもちろん、仕事として引き受けたからには何があろうと最後までやらなければならないわけですが、彼らにとっては理屈ではないようです、下手をすると工事がそこで停滞してしまう可能性まではらんでいるのです。
かといって、設計と違う施工をされては、何よりもお客様に対しての損害です。どんなに面倒でもストレスでも、ここはなんとしても是正にもっていかねばなりません。

 

スチールいなずま階段と木造で造るスチール階段

その家のその場所に 滝沢設計のデザイン

こうした人たちと、「うまく付き合う」などと言っているようではまだまだいまいちです。
彼らの気持ちを理解してどのようにしたら彼らがスムーズにこちらの望む方向に動いてくれるか、彼らの立場に立って思いを巡らせるようになることが肝要です。そうでないと、その時はなんとかしのげても相手の心の中にしこりが残っているので、またいつか暴発してしまうかもしれません。
そうならない為には、上っ面だけでなく丁寧にひとりひとりと接していくことが大切なんだなあ、とやっとこの頃分かってきました。
そして、間違った施工をした相手を責めないで、まず先に自分の過失を探します。「もう少し説明が足りなかった」「~のつもりで図面を書いたんだけど、もっと分かりやすく書けばよかった」と切り出せば、それで反発して来る人はいないものです。

設計事務所は工事現場の真のまとめ役

工事がしっかりと、安定したいい施工をする為にはまとめ役が必要です。
一瞬現場監督さんが浮かぶと思いますが、設計事務所はその更に外側で工事現場を俯瞰し速やかな工事進捗を促してゆかなければなりません。
今はもう袖の下のような行為は消滅していますので、皆をまとめて引っ張っていくためには「気持ち」、自らが体を動かして、現場の職人さん達と一緒に現場で悩み、考える。そうした積み重ねでのみ、信頼を得ることができます。

また工事現場には、流れ、というようなものがあり、それをなるべく順調に維持していくことが肝要です。

目立つ家

良い工事監理無しの良い家はありません

諸問題は途中で必ず発生するのですが、その対応・処理を誤ると、流れが向きを変え、時に悪循環にまで発展してしまいます。
お約束した工期を大きく過ぎてしまったり、もし設計を妥協するようなことになるとせっかくいい設計をしても意味がない、といったことになり。これはお客様にとっての不利益となります。

現場のその場で起きていることに、迅速に最善の打開策をひねり出して、その場にいる全員の合意を得ながら工事が進められれば、工事現場の雰囲気もよく職人さん達にも「いい仕事」をしてもらう環境が整います。

そして、お客様のご了承を得なければ進められない事は、いくら急がれたとしても絶対に拙速には進めない事。一旦工事を保留扱いとして、できる限り早く彼等への回答を伝えられるように努めます。あまりに回答が遅れてしまうと現場の人達からの信用を失ってしまうので、ある意味とてもシビアな失敗が許されない環境とも言えます。まあそれがまとめ役の宿命なのかもしれません。

おかげさまで、滝沢設計の工事現場ではいつも大きな問題は起こらず、なんとか順調に進んできています。
タイル・壁紙・塗装など、最後の仕上げ工事へと進んでいくのを見る度に、これらの工事の為にこれまで地道に造作工事が積み重ねられてきた苦労が実を結ぶ、といった感でもあります。

もしご希望があれば、仕上げ工事の最中でも現場をご案内いたします。
神奈川県、東京都内を中心に今も工事中です。ごくお気軽に、散歩がてらにいらしていただけたら幸いです。