分類
ローコスト住宅には、その方針において大きく分けて2種類あります。
(あくまで「どこに重きを置いているか?」という観点での分類です。実際の業務内容ではもちろんきれいに2つに分かれるわけではなく、様々なケースがあります)
住宅A;金額を下げる事に特化した住宅
・建物を規格化・単純化して、工事費だけでなく設計と施工にかかる経費を全般的に削減、あるいは圧縮する。(社内の人員数、技術研修費、社員労務時間、ミスやクレームへの対応経費)
・仕事がシンプルになって作業効率が上がり、物件の可能処理数が増えることにより大量仕入れでの原価ダウンを期待する。
・会社の方針によりスキルを高める教育体制が存在しないので、社内規定を外れて高い技術を要する顧客の要望には受け入れ態勢が無い。その為お客様から言われた通り行うことになり、更に良くなる提案ができないことが多い。あるいは時にお断りすることもある。
・一度決まった事項の仕様変更は原則無し。あるいは基本的に不可。(社内経費を増やさない、ミス防止のため)
・使用する建材のランクを支障のない範囲で下げる。(基本、建材メーカーからの指定品を標準仕様として定める)
・サッシ(窓)はメーカーと取決めをして、1棟あたりの数とタイプに制限を設け、それから増える、又は外れるケースは追加金額が発生する。
注)一昔前によく聞かれた、「サッシに網戸がついていない」「敷地内の建物の屋外の電気・水道工事はオプション工事」「足場や仮設水道などの仮設工事を別途で請求された」などの悪質なローコスト住宅のケースは、今回のブログでは除外しています。さすがにもうこのような例はなくなっていると思われますので。
住宅B;価値は落とさず、より高めた上で、技術とアイデアを駆使して金額を圧縮した住宅
・住宅にとって良いものは取り入れて削らず、重要度が低い部分のみを選別してコストダウンを図る。
・既製品のみに頼らず、時には設計と施工の工夫で造作(手づくり)を併用しながら最小限の価格で最大の価値を引き出す。
・技術研修(日々のデザイン・技術向上への努力)に力を入れ、設計・施工の能力を高めることで、お客様のハイレベルなご要望を実現することはもちろん、ローコストに行う工夫を加えて工事完了までまとめる。
・要望を叶え、さらに変更も全て受け入れていながら、同時に金額は低く圧縮されている為、お客様との打合せもスムーズ。
・建材メーカーから指定されるのではなく、設計者自らが調査して見本を取り寄せ比較検討した上で、デザイン・性能全てに同等以上かつ安価な建材商品を発掘する。そうした小さな積み重ねで全体のコストを押し下げる。
・サッシ(窓)は数とタイプは定めずに必要な所にはあえてコストを投じるが、不要な箇所は思い切り削減することで増額を最小限にとどめる。
比較
1、基本性能
住宅には、基本の大前提として最低限保有していなければならない条件があります。
それは「その家で暮らす家族の生活を守る」ことです。具体的には
・構造強度
・家の変形や雨漏りなどが長期にわたり発生しない事
・電気・水道・ガスなどの設備が長期にわたり支障をきたさない事
この点については、今は設計においても施工においても、様々な基準や検査が有効に機能していますので、これを満たしていない新築住宅は通常ありえない時代になっています。(一部に例外も残っているかもしれません)
A,B双方ともに問題なく合格です。
2、工事費
Aの方が金額は安いです。
パッと見比べただけでも
Aは「主として安く造る事を目的とした住宅」
Bは「仕様は高め、工夫により金額を圧縮した住宅」
という違いがありますので、これは原因と結果の法則からも当然です。
3、期間(=設計の打合せ開始から工事、お引き渡しまでの期間)
Aの方が早い(短い)です。
Bの場合、設計の期間で2か月+工事で1か月。少なくても3か月間は長くなります
4、お客様との相性
最後に、それぞれの特徴からそれぞれにどのようなお客様が合っているかみてみましょう。
Aには
「まずは安さに魅力がある事が重要」
「早さは最優先事項」
「一般的に珍しいと思われるような希望や要望はない」
「特に高いデザインは望んでいない」
という方にはピッタリはまっている、といえます。
一方Bには
「多少だったら、限度はあるが、費用捻出を検討しても良い」
「~月までの入居がマスト。といった期間面での条件はない」
「これだけは絶対に、という要望がある。それがけっこう難しそう」
「かっこいい」「おしゃれな」「カワイイ」「素敵な」「センスがいい」などの家造りに対する希望を抱いている。
こうした方々は、自然とBがしっくりくるのではないでしょうか。
これらの選択要素の中のどれを重要視するか、こちらもまたお客様次第です。
次回以降
掘下げてみるといろんなことが見えてきましたね。
これから先は主にBについての話となりますが、この時点でBにはあまりご興味が涌かない、という方にも是非読んでいただいて、これから家を建てるに際してなんらかのプラスになっていただけましたらさいわいです。
次回から、Bの金額を圧縮していくための方策の数々と考え方、そしてテクニックを具体的に順を追ってご説明していきます
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