前回の内容

不動産の比較的堅実な投資という性質は、今の日本の経済・金融政策の過程の中では新規参入者の増加を促す傾向にある事をお話ししました。

そしてもう一つ、相続時改正により節税目的での新築アパート建築が増えてくることも忘れてはなりません。
こちらのケースは既に土地をお持ちの方の土地有効活用なので、新しく土地を購入してアパート投資をされる方とは異なっていますが、それによって新築アパートの供給量が増えることは要警戒事項です。

それらにより、多方面で深い検討をせずに「建てさえすれば満室になる」的に安易な発想でアパートを建てるだけでは、期待したような投資結果は得られません。つまり、ライバル達と差別化を行い優位性を得る必要があります。
かといって無尽蔵にコストはつぎ込めません。そこでツボを心得た戦略が必要となってきます。

アパート建築の成功

問題点を洗い出す

みなさんは「アパート」と聞くとどのようなイメージを浮かべるでしょうか。

ちょっと聞き方を変えてみましょう、あなたがアパートを建てる立場になったとして、そのできるアパートを想像してみると?

たぶん、南北に細長い真四角の住戸が、金太郎飴のように平行に連なっている間取りと、外観は見るからに「金かからんよーに造っとるなー」といったなにも特徴のない、数秒後には忘れてしまう建物ではないでしょうか。
「まあアパートなんだから・・・」実はこの考え方こそが大きな問題です。

競争相手は多いのに造りも部屋の広さも他と似たり寄ったり。ここでもし、あなたのアパートが立地や日当たりなどで特に秀でた魅力を有していなかったら・・・最悪の空室・・・入居者を獲得するためにはもう最後の手段、家賃を下げるしかなくなってしまいます。

困るのは建ててからでは直せない事です。新築時はどのような建物でもある程度入居者は入ってくれてしまうので、10年後空室が目立ってきて初めて、時代の先を読んでいなかったことに気づきます。そしてそれは現在の傾向から思ったよりも2次関数的に早くやってくるかもしれません。まだ建て替えるには全然早いし・・・

新しい世界へと動く時代に機敏に対応する

神奈川

戦略其の一

これからはまず計画設計(=プラン)のレベルを高度化して、アパートとしての基礎的な力を持たせることが必須です。

計画設計には大きく分けて、間取りと建物の性能・品質とがあります。これら両方とも上を目指さなければなりません。

間取りには斬新さは必ずしも必要ありません。が、既存の間取りに囚われては絶対にいけません。
ただし、その部屋だけを見た時パッと見は良くても住んでみたら、隣りの部屋の音が筒抜けだったり、通常レベルを超えて暑かったり寒かったり、湿ってしまっていたり、一年中真っ暗な部屋だったりしていては無意味です。
なぜかと言うに、そのような賃貸住宅には入居者が長く居てくれず空室が多くなってしまうからです。
つまり間取り・性能・品質全てにおいて一体となったバランスの良い向上が必要です。

戦略其の二

土地を見る目を養う。つまり、一見するとパッとしない土地の、隠れた価値に気付くことです。

条件が良い土地ばかりではありません。例えば敷地の形が不整形、とか道路と高低差があるなど、いろいろです。

ここで悲観せず(土地購入からの場合はその土地を対象から外さないで)、反対に活用法を見いだすことができたら一歩成功に近づきます。

お手持ちの土地に対してあきらめないで、見方を変えるととても強みがある土地かもしれません。

土地購入からの方にとっては割安に土地購入ができた分を建物の付加価値強化に充てれば、そのようなデザインで入居者にアピールできるアパートは今のところまだほぼ皆無なので、ライバルをまた一つ、大きく出し抜くことができます。

それからエリアの選択では、先に述べたような相続税対策で建てられるケースが多いようなエリア(世田谷の畑エリアや港北ニュータウンなどの以前は農業地だった、地主が幅を利かせているエリア)については、競合が多い、あるいは増える可能性があるのでより慎重な投資計画が望まれます。

戦略其の三

入居者を外観で引きつけ、内観であなたのアパートのファンにする。

通りすぎたことに気付かなかった、とか、室内にもこれといったものがなく安価品だけでごまかしたようなアパートで順調に部屋が埋まるのは新築後3~5年程度までです。

さらに近年では、キッチンや洗面台など既製品の見た目を上げることでポイントを上げようとする賃貸住宅も増えてきましたが、これは多少の金額でいとも簡単に真似ができるのであっという間に広まり、もう今では通用しなくなっています。

それとは反対に、誰もが一旦立ち止まる、少なくとも目を停める。そして通りすぎた後「あのアパートいいね」と心のどこかに残る。そんな、人間の共通の感覚に訴えられるようなアパートができれば、それはもうしめたものです。

高級な建材に頼るのでなく、少しでも付加価値の高いものを、徹底的に探すというより“見つける”。
この設計者のセンスとそして努力の積み重ねが、ライバルたちに着実に差をつけてくれることになります。

これを、工務店さん達やハウスメーカーなどの設計社員さんに期待するのは酷かもしれません。
でも日々鍛えられて育ってきた我々設計事務所にとっては、ごく自然な日常の普通の仕事です。

ただしこのように工夫をする事は、どうしても費用(=工事費)はプラスの方向となります。
つまり、その費用を低く抑えることのできる建築家との出会いが、神奈川のこれからのアパート投資の成功を左右すると言える時代になってきています。
「新築」の看板が外れてから時間が経つほどに、「時間が経ってもデザインの良さは古くならない」これらの価値は逆に上がってくるのです。

ですのでここで肝要なのは金額が上がる事を常にマイナスイメージではとらえない事だと思います。(オーナー様にとっては容易なことではないとは思いますが)
費用対効果を十分に検討し、それによって先々のリターンのほうが大きければ、デザインの導入はプラスに作用します。

まずは「アパートなんだからとにかく安く造る」という固定概念は過去のものとしなければなりません。
是々非々で対応し効果が見込めることには、ご予算の投入に腹をお決めいただき、その金額を限界まで抑えるために設計者と一緒になって頑張ることにエネルギーを使う方が、眼前の金額だけを節約するより長い目で見て有効な方法です。

どうしても初期投資額にだけ目が向いてしまうが故に、まだこれを実践しているオーナー様はほとんどいません。これはチャンスに他なりません。

なんといっても設計者の個性によるマンパワーに依るものなので、競争相手も真似自体できません。
この強みがが、見回してみてもこの他に有効に差別化する方法がない理由です。

次回はこれらの戦略の具体例を詳しくお伝えします。