両立は簡単ではない

どちらか一方の対応ならば取り組みやすいですが、両方とも充足させるとなると困難で、逆にどちらも悪化しかねない危険さが伴います。

(*この記事は2016年の大晦日に行われた内山高志の2度目の敗戦の前に書かれたものです】

日本が世界に、束の間誇っていた二人のボクシング世界チャンピオンがいました。
言わずと知れたノックアウトダイナマイト、内山高志。そしてボンバーレフトの三浦隆司。
他にも世界チャンピオンはいるのに、なぜこの二人が誇られていたかというとそれは階級です。スーパーフェザー級という日本人としては滅多に世界を伺えない重めのクラスだからです。とはいってもボクシング界では軽量級に位置付けられているのですが、とにかく日本人の体格の場合は世界と勝負するのが困難な階級だというのは事実でしょう。(ちなみにその上のライト級に日本のジム所属のホルへ・リナレスがいますけど国籍はベネズエラ)

100%
日本人世界チャンピオンの歴史

過去に目を向けると、有名なところではガッツ石松はライト級だったので、あのひとはふざけてばかりいるようですがとってもたいしたものだったわけです。それからその上のスーパーライト級で浜田剛、これも今考えるとすごいことです。そして日本最重でのチャンピオンは竹原のミドル級で、ミドルというのは浜田のクラスよりも3つも重い階級ですから、これは奇跡のように捉えられています。ロンドンオリンピックで金メダルを獲った村田が今そのミドル級で頑張っていますね。

内山高志

彼はパンチの強さが目立ってそればかりが取り上げられますが、実は防御、ディフェンスの技術・能力にたいへん長けています。しかしながらこのディフェンス力は完璧と言えるものではありませんでした。この点をもっと問題視すべきだったのかもしれません。
いい所を伸ばすということか、この彼のパンチ力は向上し続けました。
ディフェンスでの不安は地術的なことだけではありませんでした。誰もが本当は気付いていたはずです。そう、彼ははんぱじゃなく「打たれ弱い」んです。
今まで二つの試合で「え、こんなパンチ1っ発だけで?」と思うようなパンチを受けて何度もダウンしています。両試合共になんとか判定に持ち込んで勝ちはしましたが、今思うとあれはやっぱり内山が抱える爆弾でした。
その後の試合ではほとんどパンチを受けずに圧勝が続き、「次こそはラスベガスに乗り込んでビッグマッチ、世界進出だ」の掛け声にかき消され、視聴者は彼の欠点に蓋をしてしまったのかもしれません。でもトレーナーは分かっていたはずです。脳の振動を小さくする為に首の筋肉を鍛えるとかすると、きっとそれをすることで彼の「いいところ」が損なわれたのかもしれませんね。
かくして欠点は改善されないまま、1発のパンチを受け先日の試合で世界チャンピオンから陥落しました。
日本の中で安全な対戦相手をあてがわれているのと違い、ラスベガスなどに行ったら反対に「こいつには勝てないだろう」みたいなマッチメイクが常です。もうこれは絶対に、今まではかわせていったはずのパンチを受けます。あのままでは、もし世界進出などしても結果は見えていたのかもしれません。ならばやっぱり、いいところを更に伸ばすことは当然のこととして、同時に欠点の改善が必要だったのではないでしょうか。

成功する為に

三浦隆司

彼の特徴はやはりパンチ力。そして打たれ強さと根性と劣勢を跳ね返すチャンスが来るまで耐えられる無尽蔵のスタミナ、です。
というわけで、ディフェンス能力には難があります。ですから毎試合パンチを受けまくり顔をパンパンに貼らしながらも最後に打ち合いを制する。というのがスタイルです。
事実これで勝っているんだからこのままでいこう、ってなもんだったのでしょうか。
彼も「いいところ」であるパンチ力に磨きをかけスタミナ面も衰えることはありませんでした。
ところが今度の相手は、三浦との試合後に筋力とスタミナを強化させる禁止薬物で引っ掛かりました。なんでもその成分が入った肉をうっかり食べたからで、その後の検査には合格して無罪放免のようですが、少なくとも三浦との試合の時点では筋力とスタミナが上がっていたとも言えます。このように三浦の「いいところ」を凌駕した相手が出てきたら、カバーしてきた欠点が浮かび上がってきてしまうのではないでしょうか?
結果は今まで彼の試合ではあり得なかった「打ち負け」でした。三浦も良いパンチを浴びせダウンも奪ったのですが、粘りが身上の三浦が粘り負け?
予想外の事態にも対応するためには、ひとつには彼の最大の武器であるパンチ力をもう1段階レベルアップして勝つ可能性を上げることと、やっぱり欠点も無くさないと難しいのだと思いしらされました。

家を建てた方、これから建てる方。

あなたが家を建てる土地は、もっと活かせばもっといい家を産み出せるのではないですか?
家族の個性を抑えるのではなく、全員がもっとのびのびと暮らせる家のほうがいいですね。

あなたの家は、ハウスメーカーが建て易いように誘導されて、どこかで我慢していませんか?
あなたの家は、建築家のエゴで住みやすさが損なわれてはいませんか?

家造りは大イベントですので、持てる魅力は全て引き出しましょう。
そしてまた、住宅には欠点があってはいけません。
もちろん全てが100点満点というわけにはいきませんが、100点超えは大歓迎でも赤点は一つでもあってはだめなのです。

家造りの成功は、ハウスメーカーや建築家の為でなく、その家を建てる建築主の為のもの。全ての必要項目において合格点を持つようにコーディネイトして成功に導くのが、設計・監理をする我々設計事務所の最大の責務です。