談合は最も醜悪な根絶すべき悪習です。
いまだに公共事業の世界では根強くはびこっています。というか市区町村、つまり役所によってはしっかりちゃっかり現存しています。でも我々の民間の世界では、とっくの昔から談合など皆無となっています。

[競争入札]

談合の次に現れてきたのが「競争入札」です。
ケインズの「神の手」のように、広く公平に市場原理が働き自然と工事金額が下がるはず、ということでした。
もちろん見積り額は下がりました。だってみんなまずは工事を受注する事が初めの一歩であり、つまりその先の生活が成り立ちません。

でもすこし離れた所から眺めてみると、そういういいことだけでは済まないことがだんだんと分かってきました。

本来あるべき姿はVEです。

全体をくまなく、品質を向上させ無駄をはぶき高効率化することによって“結果的に”いつのまにかコストが下がっていた。こうあるべき、というかこうでなければなりません。

VEがなされず、ただ単に工事金額だけが下がると次にどんなことが起きるでしょうか?
いうまでもなく「赤字」という事態に、施工業者たちは直面することになりました。

1件や2件であれば赤字の工事があっても乗りきれるかもしれません。しかし零細企業の場合は3件赤字が続くと倒産すると言われています。
倒産を目の前にした施工業者が、3件目の工事で追いつめられた時に頭に浮かぶのは・・・

そうです。「手抜き工事」です。

本来は潔癖で誠実な人でも、生活苦に追い詰められてしまうと少しづつ発想が変わってきます。「これくらいは大丈夫だろう」それがだんだん増長していき、結末は欠陥工事まで進んでしまう事もあり得ます。

ローコスト

裏を読み解く。

工事の品質が下がらずに、適性の範囲内で金額のみが圧縮されるという好循環を生むための望ましい形態は、発注する側(設計事務所など)が事前に施工業者の能力や特徴を把握し、その工事に最も適した品質と金額でできる業者を複数選別し、最も低くかつ施工業者にも最低の利益が残るであろう金額を計算し、その金額を念頭その複数業者と交渉する形です。

しかしこれには発注者に秀でた知識と能力が求められます。

ところが一方競争入札では盲目的に競争原理のみに頼るため、このような知識と能力を用いることなく、ただ乱暴に施工業者をいたぶる形で、単に金額だけを競わせてしまいます。

そして見積りの数字だけしか見ず、その工事の内容に注意を払わない、というか見積書から工事内容を読み取る技術力に欠けている為そこで見直しをすることがdけいません。
未然に防げた工事のトラブルを生んでいるのは、実は競争入札を仕掛けた側なのです。

木だけを見ないで森を見よう

競争入札は工事金額を算定することができない経験不足な者が、元請けの笠を振りかざして、一見するとコストダウンぽい弱い者いじめです。
本当に優れた発注者が進めれば、競争入札などさせずとも、施工業者さんたちの立場も尊重しながら適正にそして可能な範囲内での最下限額に見積り額を調整していくことができるのです。

またもうひとつ、目立たないけれどとても大切な事があります。

施工業者達の気持彼らも人間です。気持ち良く施主の為にいい仕事をするのと、金額だけを比較されさんざんに下請け扱いをされた仕事をするのとでは、同じ薄利でも毎日の作業に差ができます。

工事の完成は日々の積み重ねです。最後になって工事の質に違いが出るというのは、こういう事も無視はできません。

できることなら「御社がこの工事には合っているからお願いしたい。金額も仕事もがんばって」という方が、業者の精神面だけでなく、ひいてはお客様にとって金額と工事の質という、とても良い結果をもたらすことになります。

つまりは工事をまとめて進めていくリーダーとなるものが、そういった一声かければ飛んで来てくれるようなスタッフに囲まれて仕事ができているか、というところに係ってきます。

建築というと、いかにも理系の技術的な世界に思えがちですが、じつはこうした心の部分、いわゆる「いい人」であることや相手のことを理解し思いやることのできる人柄、がものをいいます。
気遣いのない人の周りには真の人間関係はありません。

東京や神奈川にはそれこそ星の数ほどの建築業者がいます。
その中からそういった良いネットワークを持った造り手を見つけるのは至難の業かもしれません。でもここはあきらめていい所ではありませんね。
業者が多いということはその分だけ、良心的な造り手の数も多くなります。
最期のここまできて間違えてしまわないように、肝となることがあります。
大前提は、VE以前の話として、会社運営の経費がかさむ大きな会社ではそもそもの利益率が高いので対象とはなりません。
次に先ほど「ネットワークのリーダー」と書きましたが、まとめる能力を客観的に比較すると、施工が専門の施工業者よりも、施工を把握したうえで設計をする設計事務所の方が総合力が高くなります。
あとは、ネット検索のキーワードを工夫して、1ページ目の初めだけで検索を終えずに、辛抱強く探しましょう。一生に一度歩かないかの大事業ですので、後悔などなく満足して家造りのできるパートナーと出会っていただきたいと願います。

工事

お金と時間だけでは人の心は動きません。

誠意・気遣い・心配りによって心は初めて動きます。あなたの家造りに参加するすべての人の心を動かしましょう。
心が動くと+αの何かが発生します。その何かが積み重なってこそ、家の造り手側に良好な人間関係が生まれ工事現場に好循環が生じます。それによってお客様にとってのいい家はできていきます。

次回につづく