はじめに

注文住宅で二世帯住宅を建築しようとした時、家族全員がハッピーに暮らすための条件とは何でしょう。
まずは基本中の基本。「人数が増える分だけ喜びが増す」こと。
これには人間というものが元来群れを形成して暮らす生物だ、ということが密接にかかわっていると思います。足らない部分を補い合い、プラスの部分を相乗効果でさらに高めていく、そんな家族が理想ですね。でも、例えば何も考えずにひとところに人間を集めるだけでは、いくらそれに血縁関係があったとしても摩擦や衝突の危険性は隣り合わせです。

そうならない為には住まいの中に様々な工夫を盛り込むことが必要となります。
それは、「2つの家族が一つの2世帯住宅に暮らすことによって、以前にはなかったものを得ることができる」ことを目指すことです。

嫁姑問題に代表されるように、生活スタイルの違う2家族が同じ屋根の下に暮らすうえでの、様々な場面で生活習慣上の「違い」を摩擦などではなく、お互いが魅力と感じられるように昇華させなければなりませんね。

互いの魅力と感じるものが一致する所

それぞれの世帯の求めるものは様々です。
子世帯の要望としては、
遠方くではなく近くで親の面倒をみたい。
そして現実的なこととしては共働き夫婦の増加から、家事や育児の面倒を親世帯に手伝って欲しい。
親世帯は
急病時や防犯面で安心したい。
子世帯の子育てを支援したい。
といった要望があります。
昔のように長男家族は親と同居するのが当たり前、という不文律により縛られるのではなく、ある種実利的な側面から「お互い一緒に暮らすほうが良い」と感じて同居に踏み切る家族もいらっしゃることでしょう。
ただそこでも、もちろん根底に、お互いに一緒に暮らしたい、という自然な欲求が、人間という種には潜在的にあるのだと思います。

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二世帯住宅に正解はない

二世帯住宅を計画する時に理解しておきたいのは、「二世帯住宅に正解はない」ということです。
例えばキッチン・水廻りを2家族共用とするか、各々で個別に2セットもうけるかは、よくよくご要望やライフスタイルのヒアリングをしてベストな形を模索していきます。
お客様によっては「どっちがいいかな?今まで考えたことなかった」というかたも意外と多いものです。急いで決める必要はありません。
これはもう、個々の2世帯住宅毎に一つとして同じ形はありません。子世帯・親世帯それぞれと、2世帯住宅とした場合でその両方を併せてどういった間取りが望ましいか、一緒に考えていきましょう。

また敷地条件や法規制によっても、例えば完全分離の二世帯にすることが困難な場合もあります。そんな時は片方のキッチン・お風呂のサイズを小さくして、狭小住宅で培ったテクニックも総動員して、なんとか希望をあきらめることなく実現に向けていきまましょう。
このように夫妻どちらの親との同居なのか、働き方、暮らし方、子どもの年齢、立地条件などにより、幸せに暮らす二世帯住宅の間取りは異なるのです。

一番大事な事

それは「つかずはなれず」の絶妙なバランスを成立させることです。

今まで別々に暮らしてきた家族がある日を境に、一つ屋根の下で新たな家族として暮らし始める。
これにはそれぞれのプライバシーの確保無くしては、決して成し得ません。
でもプライバシーを分けるなどということは設計する上では簡単な事です。区切ればいいので。しかしそれでは手にできたはずの一番大事な、2世帯住宅のメリットを捨てることになってしまいます。
プライバシーを確保しながらも、それぞれの家族を見守り合い。助け合い・思い遣り合う。そうあるべきだと、滝沢設計は考えます。

親世帯を孤立させず、双方の存在を無意識に感じ続けられるような間取り。たとえばお母さんの寝室のドアはガラス入り引戸にして通り際に様子が感じられたり、上下階に分かれるならばちいさな吹抜けを設けて、そこからご飯の合図ができたり、ごく自然に集まり・離れ・行き来する。そんな2世帯住宅がいいな、と思います。(これが一番難しい設計なのですが)

じっくりと時間をかけて知恵を絞る

二世帯住宅を考える時、併せて将来的な家族の生活の仕方や家族構成の変化についても、考慮が必要です。
ある程度未来予想図を想定しながらプランニングしていけば。ずっと未来には、時間が経つほどどんどんいい家になっていけます。じっくりと時間をかけて、知恵を絞りながら考えておけば、規格外の魅力を持たせることができるのもまた、二世帯住宅の利点です。
そして、世帯の間に生じる違いを上手に調整して、利点に変貌させていくこと。それは設計事務所の大事な務めです。
滝沢設計はそういった微妙で繊細なプロセスを、気配り気遣いを持ちご家族のご事情には十分配慮して立ち入らず、かつしっかりバランスよくまとめていくことにかけては、けっこう優秀です。

二世帯住宅の実例もあるので、「デザイン住宅実例集」にもお立ち寄り下さい。