デザイン重視のローコスト住宅を設計している横浜の設計事務所、滝沢設計です。
私が暮らしてきた神奈川を例に、海の近くに住むことについてお話しします。

屋上からは海が見える

海のそばに暮らすなら

神奈川県の海沿いは湘南・横須賀などのように、都会ではないけど全くの田舎でもない、ちょうどいいバランスが魅力です。横浜でも南端の金沢区には漁港が2つもあって、沿岸の気持ちいい公園も充実してかつ、頻繁に花火をやっていて、都内にもなんとか通勤圏という贅沢な環境が整っています。
さらに南下して横須賀に行き、中心街を離れはじめて16号線も終わりに近づくと、ひなびた漁村の風景が現れ何とも言えない郷愁が呼び起こされます。そして三浦の自然と三崎の漁師町の風情は、まるで旅番組の中に降り立ったような錯覚を与えてくれます。


また、時が止まったような葉山ののんびりとした雰囲気を通って、落ち着いた品のある逗子・鎌倉を過ぎると太平洋の水平線の先には江の島。自然に開放的にしてくれる雰囲気、そして辻堂から茅ケ崎間の思わず住んでみたくなる魅力的な湘南エリアへと、変化に富んだ風景が連なっていきます。

海のそばは親潮のおかげで冬暖かく夏涼しいという気候の恩恵だけではありません。東京湾や相模湾を行きかう船影や、広く眼前に広がる太平洋は、磯の香りや、潮騒、青い空、夏の水平線に湧き上がる入道雲、まばゆい陽光にきらめく波、夏の賑わい、冬の静けさといった、素晴らしい自然の贈り物を五感全てで受け取ることができます。海には癒す力があるのかもしれません。

通風で暖かく涼しいリビング

このリビングに海風が吹き抜けていく

海のそばに家を建てるなら、是非ともこうした海の良さを十二分に活かした家にしたいですよね、いや、したいではなく、そうしなければいけません。

もし家の建つ範囲内でどこかに海が見えるスポットがあるならば、そこが家造りの重要ポイントになります。
あるいは、マリンスポーツがメインテーマのかたはそれらの器具の倉庫、維持管理・出し入れのし易さなども必須要素です。
つまり通常の個人住宅とは一味違った、というか増えていく課題を住宅の中にうまくミックスさせていくことになります。

こうした設計を、面倒がるのではなくむしろ腕を振るって、施主と一緒に楽しんで家造りができる設計事務所が、心強いパートナーになってくれるでしょう。

滝沢設計のホームページへGo! ここをクリックorタップ

しかしながら良いことばかりというわけではありません。海のそばで暮らすとことで、どうしてもつき合っていかなくてはならない自然現象の余波があります。それが「塩害」です。

塩害

初めて沿岸エリアに住まいを求めようとする方は耳慣れないかもしれませんね。
塩害」とは文字通り海から吹き付ける風に含まれた塩分が、自転車・自動車、あるいは建物の金属部分を錆びさせるなど悪さをすることです。洗濯物がべたついたり、あまりありませんがひどいときには植栽などが枯れたりしてしまうこともあります。海から200~500mが重塩害地域、2km以内が塩害地域と区別され、対策も異なります。
私個人の経験値では1キロくらいまで離れればほとんど影響はない感覚です。でもこれはたまたま私が知っている限定されたエリアでの感覚に過ぎず、地形や風向きによっては一概にも言えません。

外の自然を取り込んだ、豊かな暮らし

対策

注文住宅で家を建てる時、注意したいのは屋外の金属部分です。例えば雨樋・縦樋は樹脂製のものがお薦めです。板金部分はアルミかステンレス、それが無理でも少なくとも「ガルバリウム鋼板」を使いましょう。エアコンの屋外機などは、本体が錆びるということはないのですが、基盤が影響を受けやすいので、塩害仕様のタイプを使いましょう。
とはいっても、同じ海のそばでも地形、方位。主な風向きによって全く影響は異なります。見過ごせない被害の場合も、あるいはほとんど影響が感じられない場所もあります。住宅の塩害については、建てる場所や敷地条件により対策も変わってくるので、新しく引っ越す場合にはそのエリアのお店の方などにヒアリングをして、長く住んでおられる方の生の感覚を参考にしましょう。

海沿いの住宅の設計

もし海の真ん前だったとしたらこれは実はとても幸運なんことですが、反面として、台風の際の飛来物対策や海砂の家の中への侵入を阻止する方策が必要です。
だからといってせっかくの海を家の中に取り込まない手はありません。
・今のサッシはペアガラスなので、基本的に大きな窓は我慢しないで思いっきりつけていいです。
でも大きなガラス面にはガラスの厚さを増したり(ガラスの厚さはそのサッシの製品仕様の範囲内で指定が可能です)、トリプルガラスの検討も必要です。台風時の備えにシャッターを設けておきましょう
・台風の風圧に耐えられるよう、耐力壁は大目に設けましょう。それによって基礎のホールダウン金物も連動して強化されますので、がっしりと持ちこたえられる家になります。
・換気扇やエアコンなど外気を吸い込むものは海と反対側に設置しましょう(どうしても海側になってしまうときはフィルターで軽減できるタイプの機種を選択)
・外壁の仕上げ材には強い塗膜のものを使用しましょう(モルタル外壁の場合は最表面にフッ素系塗料吹付)
・屋根材は、軽くて強風に耐えられて腐食にも強い、表面がフッ素処理されたガルバリウム鋼板を使いましょう
・基礎の鉄筋にはエポキシ樹脂塗装を施した鉄筋を使用しましょう
・鉄筋コンクリートに塩分は天敵で水は塩分を含んでいますので、可能な範囲でコンクリートの水の割合を少なくするよう建築士に依頼しましょう

これらをきちんと正しく行うだけでも確かな効果がありますよ。

海が持つ良さを最大限に活かして「明るく」「開放的に」「風を
気持ちよく通す」設計ができれば、他の地域では絶対にできない家になり、高い満足の?暮らしが待っています。

このブログを書いた滝沢設計のホームページへ

ローコスト住宅のページ

アメリカンスタイルの家の外観画像

アメリカンスタイル、西海岸の家定番のよろいサイディング

日頃のお手入れ

ステンレスやアルミなど錆びにくい金属でも長期間塩分が付いたまま放置しておくとやはり錆びてしまいます。
実は一番の対策は、水拭き・乾拭きで落としてあげることなのです。でもそれは忙しい毎日の中では難しいですね。

なので大事なものは家の中に、というのが簡単で効果大です。
大事のものだけど屋外に置くしかないものには、たまにホースでに放水してあげましょう。大切な樹木にも忘れずに。
意外な盲点はは雨が「あたらない」場所です。雨があたるところは雨が塩分を流してくれるのですが、そうでないところは塩分が乾燥して付着したままになってしまいます。案の定、海から100m位に住んでいた時はベランダに出していたアルミ製の脚立もけっこう錆びて、しまいには開かなくなって固まっていました。

これらの事から言い換えますと、塩害を受けたくないものは室内に入れておけば大丈夫。問題は室外の雨がかからない所です。

 

慈しむ

こうしてまとめてみると、海との距離がかなり近いか、距離はあっても地形と風向きの関係でモロに海風が直撃する場所でなければ、塩害といってもさほど決定的な障害ではないことが分かります。(地形と風向きによる地域性は可能な限りの事前確認が求められます)

洗濯物は何日も干しっぱなしにせず短時間で取り込むとか、屋外の雨がかからない所のものにはたまにホースで水をかける、この程度なら、海のそばで暮らす恩恵と比べればたいしたことない、という考え方もあります。
「海のそばに暮らす」という恩恵と引き換えに、多少は手間のかかる事もあると割りきって考えてみたらいかがでしょう。それもまた自然と寄り添って生きるということです。長所も短所もあるわが子をいたわるように、楽しんで周りの環境の面倒を見てあげましょう。
雪国に暮らせば雪かきが、南の島々に暮らせば台風が、海のそばに暮らせば塩害が、暮らしが生の自然に近づくとついてくるもの。
「少々世話の焼ける子供」みたいな感覚で慈しんで、一緒に暮らしていけたらいいですね。

神奈川県で滝沢設計が設計したデザイナーズハウスの画像クリックorタップで滝沢設計のHPで色々な家を見てみよう