懐かしい言葉達。バックマージン、キックバック・・・でも日本人には袖の下という表現が一番ピンときますね。
あるお客様が打合せの中で、言いづらそうに私にもらしました。
「設計事務所は工務店から袖の下が欲しいから、自分の仲間うちの工務店を紹介したがる。って聞いたんですけど・・・」
その袖の下とやらのお金はどこから引っ張ってくるのかと考えてみれば、そう、お客様からいただく工事費の中から、しかありません。
いえいえ、お客様としては「そんなお金出すもんか!」と、当然です。
滝沢設計では、もしもそのようなお金があるのなら見積りから引いて、お客様に少しでも安く工事をするように厳格に伝えています。
でも、それ以前の話があります。
そんな景気のいい話、実はもうないのです。
もしかすると多くの人が建築業界に対して、いまだこのような幻想を抱いているのでしょうか?
これはもっと世の中に余裕があった時代、つまり一つ一つの仕事に高い利益が確保できた、過去の時代のお話です。
・右上がりの経済→所得の増加→高額の買い物が可能。
・構造材以外の住宅資材のバリエーションは少なく、デザイン化の工事は皆無。工事原価は低かった。
・施工業者数はまだ飽和状態になく競争原理が十分に働かないため、施工業者は高い利益率の見積りでも受注することができた。
・人口は増え続け、住宅着工数も伸び続ける、成長産業であった。
しかし今も昔も営業力のない工事屋さん達は自分でお客様を開拓できません。そこでお客様に直接の窓口となる設計事務所に「袖の下」を払ってでもおいしい仕事が欲しい、またある意味ではそれを引いても利益は確保できていたわけです。
今は?
・所得は下がり続けている
・住宅の質はあらゆる部分で向上しデザイン化も進み、それに伴い工事原価は格段に高騰した。
・施工業者は完全に余っているのに、増え続けている。
・人口が減少に転じてしまった。新築の着工数はピーク時の半分以下となり、今後3分の1にまで減っていく。
全ての方向がかつてとは真逆に進んでいます。
お客様の希望を盛り込んだ工事費は常にご予算を上回り、それでもお客様のがっかりした顔は見たくない。最終的には施工業者は利益を削り、設計事務所も自分のデザインを削りたくなければ設計料を工事費に回さなければ計算が成り立たない・・・そんなこんなしていいて、どこに袖の下など入り込む余地があるでしょう?過去にそんな風習が合ったことも、いやもうそんな言葉さえ我々は忘れてしまっておるのです。
さらには、接待と言われていた飲食の席も跡かたもなく消えました。
気の合う者同士の個人的な付き合いと、本当にお世話になった相手にお歳暮を贈る。これはありますし、残すべきだとも思いますが。
ご安心ください。
今はもう、良くも悪くもそのような時代ではありません。