普通のアンカーボルトと、ホールダウン・アンカーボルト

基礎にコンクリートが打ち上がりました。
これから建物が載るのを待っている状態です。
さて、上面にはなにやらボルトが埋め込まれ

ていますね。第一感で「上に載る土台を締め付けて、建物とがっちり接合させるんだろうな。」そう、これはアンカーボルトですね。

アンカーボルト

更によく見ますと、
ところどころ明らかに他と比べて長いボルトがあるようです。

これは「ホールダウンボルト」といいまして、
すこし役割分担が異なってきます。

アンカーボルトが基礎と土台を結合させるのに対して、ホールダウンボルトは基礎と柱の結合に用います。
これ、実は阪神大震災の後の法律改正によって設置が義務付けられたもので、それ以前は3階建てのみに使用されていたものです。
柱は、横向きに使われる土台や梁に加工された穴に差し込まれ、かつては重力によってのみ押さえられていました。
震災後、倒壊した建物を詳しく調査した結果、激しい揺れの際には建物が変形し、時には建物の重さなどものともせず柱が穴から抜けてしまいそれが被害に直結したケースが多く認められたのです。
そこで、基礎と、土台だけでなく柱もしっかり堅結する必要性が認知され、法制化され義務化に至った、という経過です。
ちなみに、普通のアンカーボルトよりも長いのは、通常のアンカーボルトが土台を締め付けるのに対し、ホールダウンボルトは土台を貫通してその上の柱と繋ぐから、ですね。

この「引抜き力」はどの柱も同じではなく、大きい力が発生する柱もあれば、なかにはほとんど抜ける心配のない柱もあります。
単純に言いますと筋交いや構造用合板で動きを固められるほど、その柱の引き抜く力は大きくなります。
拘束されていない柱は頭が左右に揺れていれば抜けることはありません(分かり易く言うと、土台・柱・上方の梁で形成された四角がひし形の状態になれば)が、筋交いや合板の耐力壁で横揺れに対しがっちり固められた柱ほど遊びが無い為四角に固まった状態で動きます。直角のまま動けば片方は土台から離れますね。ガタンガコン、とこのように引抜き力は大きくなります。
つまり耐力壁の強度が上がるほど、引き抜き力は大きくなります。

ここで少し話がそれるようですが、特定の耐力壁の強度を上げるとこの引き抜き力のように弊害も伴います。
なので耐力壁が全体にバランスよく配置されるように、初めから平面プランを設計することがとても大事なのです。
例えばハウスメーカさんなどでは短絡的に「柱の直下率が高いほど良い」「家の四隅には筋交いを」と言いますが、上階の耐力壁による引き抜き力は下階にも伝搬しますので、3階建てで柱と筋交いが全階連続した場合の1階の引き抜き力は、あまり望ましくないほど大きくなります。あえて「力を流す」ような柔軟な構造計画が求められるケースもあるのです。

話は戻って、各々の柱の引抜き力を算出した計算結果に応じて、基礎と柱をがっちり縛り付ける。
それが、まさに縁の下の力持ち、ホールダウン・アンカーボルトのです。
こういった法整備が2階建ての木造住宅にも様々施行され、現在は技術面では均一化した住宅が供給されるようになっています。

木造2階建ての構造強度について、もっと詳しく知るには、
滝沢設計のホームページ