はじめに

注文住宅で設計を考える時、住む人の健康と快適さを目指しますが、これを成り立たせるために「光」という自然の要素は非常に大切です。特に狭小敷地に3階建てを計画する時など、概して敷地に余裕がなかったり、隣家が間近に迫っていたりと、光をとり込むために様々な工夫を必要とします。

光の種類

「光」には3つの種類があります。窓から直接入ってくる「直接光」、壁や床に反射して入り込む「間接光」、そしてトップライト(天窓)から入る「天空光」です。これら3つを意識して設計することで、より多くの光を取り入れた快適な住宅を作ることが可能となります。

直接光

直接光は部屋に直接入る陽光のことです。敷地にゆとりがあり低層住宅に囲まれているのであれば、東・南方向に大きな窓を取り付けるのが基本ですが、都市の密集地で3階建て住宅を考えると、定石通りにはいきません。南は建物が近く1階にはほとんど日がささない、東側は隣家の窓と当り、隣の家の様子がよく見える(こちらの様子もよく見える)ため大きな窓を取りにくいなど
狭小敷地での3階建ては、一般的な陽の取り方、南と東に大きな窓を作るという考え方から離れる必要があります。都心においては西側しか開けていない土地では西日だって貴重なお日様なのです。積極的に西を開放します。また場合によっては、北側といっても空間が広がっていさえすれば大きな窓をつければ明るくなったり、景観が良くなったりします。
窓は熱の出口でもあり、ガラスは外気の寒さや夏場の熱気を伝えやすい素材なので、北や西に大きな窓をとるのは従来の考え方では、褒められた方法ではありませんでした。
しかし、今はガラスも進歩しており、トリプルサッシやガスが充填された高断熱サッシや、
ほとんどのサッシで標準化せれてきたLow-Eと呼ばれる赤外線を反射するガラスなどを上手く配置することで、居住性への悪影響を最小限にとどめることが可能になってきています。

間接光

間接光は、庭に当たる照り返しや、隣家の白い壁に反射して入る光などを言います。狭小3階建ての住宅や、密集地での住宅設計においては、この反射光を偶然ではなく、意図的に取り入れることが大切です。例えば庭の照り返しを狙うのであれば、白い砂利を敷いたり、明るい色のウッドデッキを設置したりします。

アパート建築

天空光

天空光は建物の上から入る光で、天窓(トップライト)から入る光を取り入れます。壁面の窓のおよそ3倍の採光効果があると言われています。陽当り条件の悪い敷地の場合、最も効果的な方法かもしれません。
2階に居間を作った時に、勾配天井にしてトップライトをつけると非常に明るくなります。ただ、注意したいのは南にトップライトを設けると、断熱サッシを使っていても夏場は暑くなり過ぎたり、明るくなり過ぎたりすることがあります。
トップライトの効果的な設置位置は北側です。北側に設置した天窓は一日中光量が一定でまぶしすぎず、また夏期でも暑くなりません。落ち着きのある、明るい空間が出来上がるので、アトリエを作る場合は、建物の北側に配置し、天窓で光をとる事が多いのです。
*注)3階建ての場合は、ほとんどのエリアでアルミ製トップライトは不可となり鉄製が求められます。でも実はこれも抜け道がありますので、お困りの方には教えてあげたいです。

明るい3階建てを作るヒント

以上説明した3つの光を組み合わせて、それぞれが補完し合うように考えることが大切です。例えば、天窓から入れた光を、反射を利用して下階に導きます。方法としては、3階から1階までの間に効果的な吹き抜けを設けるのは難しいですが、階段を利用するなどすれば割と無理なく効果が期待できます。
この時、吹き抜けや階段に使う壁にはできるだけ白い壁を使い、光をよく反射させます。
これは一例で、他にも東京都内の狭小住宅や日当たりの悪い敷地で、光を取り入れる方法やアイデアはまだまだたくさんあります。

定石などに頼らず、常に個々の現場に即して、この家のこの場所でしか生み出されない発想。それこそお客様にとってもうれしい設計となり得ます。

狭小住宅の特集ページ