依頼先の分類

家を建てる時の依頼先にはたくさんの選択肢があります。
それをいくつかのグループに分けてみます。
A、 ハウスメーカー
B、 中規模の地元住宅ビルダー
C、 知り合いの大工さんや工務店
D、 設計事務所
大きなくくりではこの4つくらいですね。

各々の業務の進め方

次に今回は、家造りがそれぞれ具体的にどのように進んで行くかを見てみましょう。
AとBの場合(ハウスメーカーや中規模ビルダー)
ご存知のようにもちろん最初に会うのは営業マンです。
その後幾度も打ち合わせを重ね、たくさんの要望を伝えて、その都度営業マンは気持ち良く丁寧に対応してくれ、又上手にこの家造りという一大イベントを盛り上げていってくれます。毎日のように連絡を取り合い私語雑談なども交じり始め、毎日のように連絡を取っていると自然にこの営業マンへの信頼度が高まっていきます。
だんだんと契約の意志が芽生えてきたある日、営業マンが設計の社員を同行してきました。
お客様としては「この設計の人はまあ、無能とか変人でなければいい程度で、とにかく営業の~さんを信頼してるし、もちろん~さんは工事が始まってからも、そして引き渡しまで、今のこの親密な関係が続くはずだし、トラブルが起きても~さんが最後まで責任を持ってくれるだろう」ということで、設計社員との顔合わせはあまり深く気にも留めす、何気なく過ぎて行きました。
晴れて契約の段になり、営業の~さんから「これからは設計に引き継ぎます」
「?!」初耳です。「とか言ったって、私たちはあれだけたくさんの要望を~さんに伝えてきたんだから、単にこれから設計が始まるという意味なんだろう。きっと最後まで私たちの最もよき理解者として関与してくれるんだろう、そうじゃなきゃ今までの彼の親切さは理解できない、そうに決まってる」とご自分に言い聞かせます。

ところが、よっぽどのトラブルでもない限りこの日以降、地鎮祭・上棟式・引き渡し、この3回以外で営業の~さんが姿を現すことはありません。営業マンの頭の中はもう次の契約を取らなければならないプレッシャーと欲でいっぱいです。
上棟式から引き渡しまで、といったら4か月くらい、基本的に彼はお客様の前から消えます。彼の仕事熱心だけでなく、彼の会社と上司からの指令でもあります。
もちろん会社内で、営業から設計への引き継ぎ打合せは社内規定に沿って行われています。でもとても細かな部分や、お客様の微妙なニュアンスまで完璧に伝達することは不可能です。

後悔しない家造り
「あれー、なんかこの頃設計の人から連絡は来るけど、営業の~さん出てこないね、おかしいな」と思い始め「でもこの設計の人ともお互いに慣れてきたのかな、ちょっと信頼感が出てきた」と思い始めるのもつかの間、設計が終わって今度は工事が始まる時期になりました。
地鎮祭の当日、久しぶりに会った~さんが「工事が始まりましたので、以後は設計から工事担当者に引き継ぎとなります」ときました。
「えー、やっと設計の人にも慣れてきたのにまた?まあでも職種が変わるんだから仕方ないのかな・・・」とだんだんと担当者が変わること自体に諦めがついてきてしまいます。
「きっと家を建てる場合はどこに頼んでもこうなんだろう、私たちがそれを知らなかったということか」「そうとなったら今度は工事担当者に頑張ってもらうしかない」と、ご自分を請負会社のシステムに無理やり合せるしか、心の中の帳尻を合わせる方法が見当たらなくなくなってきました。
と、こういうシステムだったとしても、うまくいきさえすればいいんです。
ところが、営業から設計へ、設計から工事へと、お客様のご要望を引き継ぎ伝えているうちに、一つ漏れ、一つは受け取り方の相違など・・・と、こういうことというのは起きないことの方がめずらしい、というか、残念ながら必ずそうなります。

一番の被害者は当然お客様ご自身です。
そしてお客様は知らない事ですが、こうしたトラブルの処置に係る補修工事や人件費などの危険経費も、見積金額の中に所定の%でしっかり計上されています。
要望が実現しないだけでなく、なぜかその対処の為の費用はお客様持ち、一見全くもって理不尽なようですが、これはシステマチックに会社を運営していく上で必要な事であり、悪とまでは言えません。

C、(大工さん)
こちらはさっきのような事はなさそうです。神奈川県は東京と比べると、まだまだ職人さんや工務店は数多く頑張っています。
こちらに依頼される場合についても、一応検証してみましょう。
大工さんの中にも資格を取って頑張っている人もいますが、実際には設計を業務として行う事は皆無で、また日々工事現場で体を使って一生懸命働いていますので、最新の施工技術や基準に目を光らせていることは困難です。
ここで無理をされて、なんでも自分でやろうとされてしまうのが一番心配です。
そうでない場合は、外部の設計事務所に設計と施工の基準については委託をすることになります。
ところがこのケースでは、旧来の慣習で本当に安い設計料がお決まりとなっています。
なぜかといいますと、昔は住宅にデザインなどというものは必要なく、そして施工の基準などというものも皆無でした。設計事務所にはただ単に確認申請の手続きだけが求められていたのです。
確認申請だけを切り離してみれば、これは「代行」や「代書」に近い、誰にでもできそうな感覚で値段設定がされても仕方ないものです。その頃の価格が、大工さん達の頭の中からなかなか離れないのです。
そういう低価格で依頼された設計事務所としては、当然その範囲内の業務でいいんだな、というか報酬的にそれ以上の事ができません。ですのでこの外部設計事務所にも、凝った設計は初めから期待できず、ましてや工事現場のチェックに活躍してもらえるという期待はとうていできません。
そいうわけで、大工さん依頼した場合は、引き継ぎによるトラブル以前に基礎的な「ハイレベルな住宅を造る為のノウハウ」が不足している為、大工さん達にはとても申し訳ないのですが、お客様のたくさんの要望の実現を期待するのは難しいと言わざるを得ません。

新築のトータル監理

最後にD、設計事務所に頼んだ場合はどうでしょう?
初めに注意書きですが、一言で設計事務所と言っても、企業として多人数でやっている会社の場合、摂家のレベルが上がること以外はA,Bと同じです。
一人の人間が、一番初めの面談から設計打合せ、工事業者の選定・見積りチェック、工事現場の進行チェック・工程と品質の管理、そしてお引渡し。更にはアフターサービスの仲介まで、完全に通して監理できるのは、それ鵜遂行できる能力と経験を持った一部の限られた設計事務所。ここでしか成し得ません。

今回のブログについて

私滝沢は、ハウスメーカーでの勤務経験がありその実体験を基にお伝えさせていただきました。
これらは一般にはあまり認知されていない事実です。

まとめてみます

☆「繊細なニュアンスが必要な程の細かな要望はないし、担当者が一人でなくても多少金額が高くても、最終的に大きな会社が安心」という方にはハウスメーカーはお勧め
☆「凝った家は全く求めておらず、最新の技術や知識よりも職人技で建ててほしい」という方には大工さんがお勧め

消去法により、上記以外のかたは、少人数で誠実に実績を積んでいる設計事務所にご依頼されることが、より安全のように思います。